神殺しのクロノスタシス1
それがお人好しだと言うなら、まぁそうなのかもしれないけれど。
少なくとも私は、彼を助けておきながら、そのまま牢屋に閉じ込めておしまい、なんて薄情な真似は出来ない。
それだけの話だ。
それにほら、図々しい話をさせてもらうなら。
今恩を売っておけば、いつか返してくれる日が来るかもしれないし、来ないかもしれないだろう?
そんな打算もちょっとはあるので、私は別にお人好しな訳ではないのだ。
「まぁ良いじゃないか。これで一件落着。私もようやくいつもの業務に戻れるというものだよ」
「…」
その、胡散臭そうな目やめて。
良いじゃない、日常を謳歌したって。
折角帰ってきたんだから。
「これでようやく平穏に…」
「なってねぇよ。シュニィの依頼忘れてるだろ、お前」
へ?
「シュニィちゃんの…?吐月君のことなら、解決したでしょ?」
「馬鹿。禁書の件だよ」
あ。
そういえば…『禁忌の黒魔導書』の捜索を頼まれてたんだっけ…。
「…そうだった…」
「…仕方ない、シュニィに言っとくよ」
「え?何を?」
こちらはまだ何も進んでないから、シュニィちゃんに報告することなんて何も、
「シルナは持病の認知症が進んで、禁書どころか老人ホームに入らなきゃならないから、この依頼はパスさせてもらうって」
「やめてボケてないから!大丈夫思い出したから!」
ちゃんとやる。捜索ちゃんとやるから。
そんな怖いこと言わないで。シュニィちゃん素直だから、本気にしちゃう。
「忘れる訳ないでしょ私が!大丈夫だよ」
ちょっと怪しかったのは内緒である。
「本当かよ?実はちょっと怪しかったんじゃないのか」
ぎくっ。
何でそんなに鋭いの、羽久。
「と、とにかく。吐月君の件が片付いたんだから、次は禁書の方を…」
と、言いかけた、そのとき。
何の前触れもなく、学院長室の扉が開いた。
何者だ、と振り向くと。
そこには、青い制服を着た警官が五名ほど、わらわらと入ってきて。
そして、五人の中で一番位の高そうな一人が、白い紙を一枚、私に突きつけた。
「イーニシュフェルト魔導学院、学院長シルナ・エインリーだな。魔導教育法違犯の疑いで、逮捕する」
…あれ。
少なくとも私は、彼を助けておきながら、そのまま牢屋に閉じ込めておしまい、なんて薄情な真似は出来ない。
それだけの話だ。
それにほら、図々しい話をさせてもらうなら。
今恩を売っておけば、いつか返してくれる日が来るかもしれないし、来ないかもしれないだろう?
そんな打算もちょっとはあるので、私は別にお人好しな訳ではないのだ。
「まぁ良いじゃないか。これで一件落着。私もようやくいつもの業務に戻れるというものだよ」
「…」
その、胡散臭そうな目やめて。
良いじゃない、日常を謳歌したって。
折角帰ってきたんだから。
「これでようやく平穏に…」
「なってねぇよ。シュニィの依頼忘れてるだろ、お前」
へ?
「シュニィちゃんの…?吐月君のことなら、解決したでしょ?」
「馬鹿。禁書の件だよ」
あ。
そういえば…『禁忌の黒魔導書』の捜索を頼まれてたんだっけ…。
「…そうだった…」
「…仕方ない、シュニィに言っとくよ」
「え?何を?」
こちらはまだ何も進んでないから、シュニィちゃんに報告することなんて何も、
「シルナは持病の認知症が進んで、禁書どころか老人ホームに入らなきゃならないから、この依頼はパスさせてもらうって」
「やめてボケてないから!大丈夫思い出したから!」
ちゃんとやる。捜索ちゃんとやるから。
そんな怖いこと言わないで。シュニィちゃん素直だから、本気にしちゃう。
「忘れる訳ないでしょ私が!大丈夫だよ」
ちょっと怪しかったのは内緒である。
「本当かよ?実はちょっと怪しかったんじゃないのか」
ぎくっ。
何でそんなに鋭いの、羽久。
「と、とにかく。吐月君の件が片付いたんだから、次は禁書の方を…」
と、言いかけた、そのとき。
何の前触れもなく、学院長室の扉が開いた。
何者だ、と振り向くと。
そこには、青い制服を着た警官が五名ほど、わらわらと入ってきて。
そして、五人の中で一番位の高そうな一人が、白い紙を一枚、私に突きつけた。
「イーニシュフェルト魔導学院、学院長シルナ・エインリーだな。魔導教育法違犯の疑いで、逮捕する」
…あれ。