神殺しのクロノスタシス1
「えーっと、つまり…。私が生徒に、使用が禁じられてる禁忌の魔法を教えて…。しかも、魔法で人々を支配するべき、なんて大昔の危険思想を引っ張り出して、生徒に刷り込もうとしたと…」

「…」

「…そういうこと?」

「あぁ、そうだ」

…はぁ、成程。

私は、そんな罪で逮捕されたらしい。

成程ねぇ。

「…それ、誰が言ったの?」

ま…ったく身に覚えがないんだけど。

本当に身に覚えがないんだけど。

私、いつそんなことした?

「生徒の誰かがそう言ったの?」

「それは教えられない」

まぁ、そうだろうね。

誰なんだろうなぁ。私がそんな馬鹿げたことをした、と告げ口した人は。

あるいは、警察が何か勘違いをして、私が槍玉に上げられているのか…。

「…一体何の証拠があってそんなことを?」

「それも教えられない」

「証拠もないのに犯人だと決めつけると?それはあまりにも…」

私の言葉が、見苦しい言い訳に聞こえたのか。

尋問官は、頭に来て私を殴り付けた。

「思想犯がっ…。大人しく罪を認めろ!」

「…」

…いったぁ…。

まさか殴ってくるとは思わなかったよ。

文明国であるこのルーデュニア聖王国で、いかに容疑者相手とはいえ、ここまで乱暴な取り調べはまず有り得ない。

しかし、嫌疑が重罪であった場合…特に大量殺人犯、そして思想犯については、話が別だ。

殺人犯が手荒く扱われるのは理解出来る。殺人は、最も重い罪だから。

そして思想犯は、殺人犯であるのと同じくらい重い罪だ。
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