神殺しのクロノスタシス1
「は?面会出来ないって…。何で?」

この施設の中に入るまで、どれだけ面倒な手順を踏まなければならなかったと思う。

やれ名前を書けだの、身体検査をするだの、持ち物を見せろだの。

「お前は容疑者とどんな関係なんだ」だの、「それを証明するものは?」だの、まるでこちらが共犯者であるかのように尋問された。

シルナとの関係を証明するものなんて、何があるんだよ。

シルナの教え子で、聖魔騎士団魔導部隊の人間だと言ったら、完全に容疑者を見る目。

「容疑者と面会して、逃げ出す算段を立てに来たか?」なんて聞かれる始末。

キュレムが魔銃を召喚しようとするのを、咄嗟にルイーシュが止めてくれなかったら、今頃この施設は阿鼻叫喚の有り様になっていたに違いない。

あそこで待てここで待て、と犬のように待たされ。

ようやく全ての手続きが終わったと思ったら、いきなり偉そうな男が出てきて、面会は出来ない、と抜かしやがった。

頭沸いてんのかこいつ。

「何で出来ないんだよ?」

「容疑者が指定重犯罪者だからだ。面会は制限されている」

「はぁぁぁ…!?それならそうと、最初に言えよ!何時間待ちぼうけ食らったと思ってんだ!」

キュレムが、ガチギレして担当官に食って掛かった。

ここまで来て会えないとなると、一体何の為に来たんだ。

いや、それよりも。

「そもそもシルナが指定重犯罪者扱いされてることが理解出来ない。あんたら、まともに調べてるのか?シルナが冤罪だってことが、何で分からない?無能の集まりな訳?」

警察相手に、なかなか挑戦的な発言をしていることは理解している。

でも、言わずにはいられなかった。

何日あいつを拘束したら気が済むんだ。

あいつの頭の中に、危険思想を生徒に教え込んで、人間を支配しようなんて考えがあるはずはない。

それなのに、何故いつまでも拘束されなければならないのだ。

しかし。

「お前達があの男に洗脳されていることは、よく分かった。お前達の名前は要注意リストに載せておく。危険思想を刷り込まれている恐れアリ、とな」

…せせら笑うように、脅しをかけてきやがった。

こ、の、野郎…。
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