神殺しのクロノスタシス1
おい、何だ展開が早過ぎるぞ。

「か…はっ…」

「その程度か、お前の野心は…?もっと使えると思っていたのに…残念だ」

彼女…クュルナの首を絞めているのは、人間の形をしているが…これは人間ではない。

本能的に分かった。

「シルナ!こいつは…」

「レティシアちゃんのときと同じ…!禁書の化身、それもこれは」

「…『禁忌の黒魔導書』ですね」

シュニィが、杖を構えた。

『禁忌の黒魔導書』…シュニィから依頼された探し物が、まさかこんなところに。

「お前には、シルナ・エインリーを処刑させ、イーニシュフェルト魔導学院を閉鎖に追い込む…その役目を果たしてもらうはずだったものを…。実に残念だ」

「ぐっ…う…」

「…魔法を使えない魔導師など、何の価値もない。死ね」

自身の契約者であるはずのクュルナを、禁書の化身は本気で殺そうとしていた。

そういうことか。この子…クュルナは、この禁書と契約を交わしていたのだ。

魔導師を滅ぼそうとしていたクュルナと、シルナ以下聖魔騎士団の魔導師を目の敵にしている禁書。

両者の利害が一致していたが故の契約。

しかし、クュルナが契約を果たせないとなると…。

…用済みだから、死ねってか。

そんなもん、俺の目が黒いうちは、絶対に許せない。

「死にたくなければ魔法を使え。魔法でこいつらを退けろ」

「い…嫌…。ま、魔法なんて…もう…」

苦しみに喘ぎながら、クュルナはそれでも嫌だと言った。

しかし。

「そうか…。ならばお前に用はない。大人しく死ね」

…ふざけんな。

何の権限があって、お前がクュルナの生き方を決めてんだ。

死ぬなら。

「…お前が死ね!」

渾身の魔力を放つと、ようやく禁書はクュルナから手を離し、後方に飛び退いた。
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