神殺しのクロノスタシス1
とはいえ、それは今だから言えること。

当時、母に捨てられたばかりの頃の私は、そりゃあ大変だった。

一人ぼっちになった私は、街に降りていった。

頼る宛もなく、ふらふらと街をさまよって、行き倒れていたところを…見かねた近所の人に通報され、私は行政に保護された。

親のいない子供を預かる養護施設…つまりは孤児院だが…そこに入れられた。

村にいた頃と比べれば、確かに、マシな生活だったかもしれない。

だが、蔑まれ、馬鹿にされ、殴られるのは村にいた頃と変わらなかった。

孤児院にいたアルデン人は、私一人だけ。

他の孤児は、皆ルーデュニア人だった。

私の髪の色は、孤児院でも目立った。

子供達は私をからかい、いじめて遊んだ。

孤児院の先生達は、それを見ても止めることはなかった。

むしろ先生達まで、私を気味悪がって、私を遠ざけようとした。

「この子に触ったら呪われる、病気になる」と言って。

私はここでも、「薄汚いアルデン人」なのだ、と思った。

悲しかった。何処に行っても、私を受け入れてくれる人なんていないんだ、と。

誰も私を抱き締めてはくれない。私の手を繋いでくれることも、私に触れることさえしてくれない。

だって私は、「灰かぶり」の、「薄汚いアルデン人」だから。

だから、仕方のないことなのだ。

誰からも愛されないのも、誰からも笑顔を向けてもらえないのも。

私は生まれながらに、そういう運命なのだ。

自分にそう言い聞かせ、納得するしかなかった。

次第に私は、一人で過ごすことに慣れた。

いじめられることにも、無視されることにも慣れた。

期待しなければ、裏切られて悲しむ必要はない。

それを学習した私は、最早、誰にも期待しなかった。

誰も愛してくれなくて良い。認めてくれなくても良い。

ただ、死ぬ為に生きているようなものだった。

空虚で、孤独な日々。

十歳になる頃まで、私は孤児院でそんな日々を過ごした。
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