神殺しのクロノスタシス1
「おはようシルナ。何寝てんの?」

「うぅぅ…。羽久の看病ずっとしてたんだよ?私。なのにデコピンするなんて酷いよ」

「あぁ、そうだったんだごめん…。目を覚ましたらおっさんの寝顔が目に入って、つい生理的嫌悪感が…」

花瓶で殴らなかったんだから許して。

…ん?看病?

「…俺、何日寝てた?」

「三日寝てたよ」

三日…。

「…あれから、どうなったんだ?」

『禁忌の黒魔導書』のこと。シルナのことも勿論だが、クュルナという子のことも。

「カオスは自爆して、禁書はシュニィちゃんが封印して、王宮書庫に戻されたよ」

「…シルナは釈放?」

「うん。無事にね」

まぁ、だからここにいるんだろうけど。

「イーニシュフェルトは?」

「閉鎖命令は取り消し。昨日から授業も再開してるよ」

…そうか。

イーニシュフェルト…。あの学院を…守ることが出来たのか。

それは何より。

「…クュルナは?」

「彼女は…一応、私を陥れて不当逮捕させた張本人だからね。無罪放免って訳にもいかなくて…。今は王宮で、フユリ様に身柄を預かってもらってる」

「…そう…」

彼女に、どのような、処罰が下るかは分からないが…。

出来る限りのことはしようと思う。

「怪我はしてねぇの?」

「クュルナちゃんは大丈夫だよ。羽久が守ってあげてたからね」

「…シュニィや吐月は?」

「二人も大丈夫だよ。…勿論私もね」

いや、まぁシルナは心配してないよ。

今目の前にいるしね。

「…なぁ、シルナ」

「んー?」

…カオスが言ってたことって何なの、と。

一瞬、聞きたい衝動に駆られたが。

俺は、聞かなかった。

聞くべきじゃない。それは。

今は、そんなことよりも。

「…ちょっと頼みがあるんだけど」

「…うん」

シルナは、分かっているという風に頷いた。
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