神殺しのクロノスタシス1
そして、朝。

その日、俺の夢見は最悪だった。

巨大な鏡餅の下敷きになった夢を見た。

餅なので、這い出そうとしても、もっちもちくっついて取れねぇのなんの。

もう駄目だ、俺はこのままお餅に潰されるしかないんだ…と力尽きたとき。

目が覚めた。

「んん…。んん…?」

何故かずっしりと身体が重くて、何かと思ったら、何のことはない。

俺の上に覆い被さるように、ルイーシュが寝息を立てていた。

…悪夢はこいつのせいだな。間違いない。

「…おい。おい起きろ」

べしべし、と頭をはたく。

朝にもなれば、このくらいで起きる。

「ん~…」

「起きろってば。朝だぞ」

ってか早く俺の上から退いてくれ。切実に退いてくれ。

「…ん?」

ぱち、と目を開けるルイーシュ。

起きたようだ。

がばっ、と身を起こし、きょろきょろ。

そして。

「…」

「…」

無言で、じーっと見つめ合い。

ふっ、と目を逸らした。

「ふわぁ…。よく寝た」

そして、何事もなかったように、俺の上から降りて立ち上がり、ぐーっと伸びをした。

おい。今目が合っただろ。無視すんな。

「人をベッドマット代わりにしたことに対する謝罪は?」

「おはようございますキュレムさん。良い朝ですね」

「俺は最悪な朝だったよ」

貴様も鏡餅に潰されてみろ。

「さて、キュレムさん。朝ご飯食べに行きますか」

「ちょっと待って」

「あ、今日お土産屋さん巡りしましょうよ」

「ちょっと待て!観光しに来たんじゃねぇよ!」

お前、何しに来たのか忘れたのか。

「失踪者の行方!探すの!分かってる?」

「え~…?」

「えーじゃねぇ!」

何?その「めんどくさっ」みたいな顔。

俺だって面倒臭いんだ。余計やる気削がれるからやめろ。

「いい加減にしないとお前…。シュニィに言いつけるぞ」

「別に言いつけても良いですけど」

そうですか。

「分かりましたよ。失踪者の捜索ですね。付き合います」

「おぉ…。頼むぞ」

やる気を出せば頼りになる男なんだから。お前は。

「でも、その前に朝ご飯食べに行きましょう?」

「…はいはい」

それはそれ、ってことね。分かる分かる。
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