神殺しのクロノスタシス1
ところで、先程俺には弟がいる、と言ったが。

この弟、魔導適性がない訳ではないのだが、俺に比べるとやや劣っていた。

俺ほど才能がなかった弟は、俺とは逆に、特に期待されなかった。

家族も周囲の人間も、本命はあくまで長男…つまり俺だった。

弟の方は、それほどでもない。

弟だって、決して努力を惜しんでいた訳じゃないのに、ただ俺ほどの才能がないというだけの理由で、弟は蔑ろにされていた。

気の毒な弟。彼は何も悪くないのに、期待も愛情も才能も全て、兄である俺に奪われてしまって。

彼は一人で、誰からも期待されず、細々と努力を重ねていた。

俺ばかりが大事にされ、自分は蔑ろにされているものだから、弟は俺を憎んでいた。

俺達兄弟は、本人達の性格や相性ではなく、周囲の差別によって仲違いしていた。

俺としては別に弟を嫌っていた訳ではないのだが、弟は俺のことを大層憎んでいた。

俺を毛嫌いして、話しかけてもこなかった。

それも仕方がないだろう。

あれだけ差別されれば…。無理もない。

しかし。





ある日突然、俺達の立場は入れ替わることになる。





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