神殺しのクロノスタシス1
端から見れば、全くなんて間抜けな話だろう、と笑い話に出来るけど。
当事者の俺にとっては、笑い話どころではない。
あれだけ必死に努力して、試験に備えたのに。
当日、風邪を引いて試験を受けられないとは。
当然、俺は試験に落ちた。
そもそも試験、受けてないんだから落ちるのは当たり前だ。
イーニシュフェルト魔導学院に入れなかった俺は、地元の魔導師養成学校に入るしかなかったのだが…。
この件で、俺を持ち上げていた全ての人間が、俺に失望した。
両親も。他の家族も。
周囲の人間も皆。
皆俺がイーニシュフェルト魔導学院に合格するものと思っていたから、俺に期待していたのに。
その期待に俺が応えられないと知るや、皆が俺に興味をなくした。
両親からははっきりと、「お前には失望した」と言われた。
「お前に期待なんてするんじゃなかった」と。
「もうお前がどうなろうと知ったことではないから、好きにしろ」とも。
風邪を引くなんて、俺の実力云々の話ではないのだが。
俺はそれまで、なまじちやほやされていたものだから。
そんな風に、いきなり手のひら返しされて…内心、酷く驚いた。
嘘でしょう?皆あれほど俺に期待してくれていたのに。
皆、俺を大事にしてくれていたのに。
たった一度失敗しただけで、しかもその失敗は俺のせいじゃなくて、ただ体調を崩したってだけなのに。
何で、こんな虫けらみたいに扱われるの?
今まで一度もこんな風に蔑ろにされたことはなかったから、いきなり手のひらを返されて、俺は困惑した。
どうすれば良いのか分からなかった。
キュレムさんや、俺の弟にしてみれば、そのくらいのこと、と鼻で笑うのだろうけど。
俺は蔑ろにされることに全く慣れていなかったから、誰からも期待されなくなるのは辛かった。
悲しかった。何で一度の失敗で、ここまで嫌われなければならないのかと。
そして、俺は知ったのだ。
期待していたのは俺ではなく、ただ俺の才能だけだったのだということに。
イーニシュフェルトにも入れない、肝心なときに失敗する愚か者は、誰からも期待なんてされないのだ。
誰の期待も、愛情も信頼も、たった一日でなくした俺は。
自分がどれほど、薄っぺらいものにすがっていたのかを知った。
どれだけ努力しようが、必死に歯を食い縛って、辛い思いをして研鑽を積もうが。
一度失敗すれば、全部が終わりなのだ。
俺が積み重ねてきたものなんて、ほんのちょっと机を揺らしたら、全て崩れてしまうほどに脆く、弱いものだったのだ。
俺なんて、所詮はその程度の人間だったのだ…。
今まで思い上がってきたぶん、それを思い知らされたのはショックだった。
周りに誰もいなくなってしまった俺は、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
最早、俺という人間に価値はない。
誰も期待してないし、誰も俺を大事になんてしてくれない。
一人ぼっちだ。
それ以来、周囲の期待は、全て弟に注がれることになった。
今まで全く見向きもされなかった弟は、いきなり周囲から期待されるようになって、大層喜んだ。
今度は自分の番だ、と思ったのだろう。
その通り。確かに、弟の番だ。
今までずっと俺が独占してきたんだから、今度は弟が大事にされるべきだ。
しかし。
今まで当然のように自分の周りにあったものが、突然なくなるのと。
今までなくて当然だったものを、いきなり手に入れるのとでは、全く意味が異なる。
生まれて初めて、俺は挫折を味わった。
そして、二度と立ち直ることは出来なかった。
当事者の俺にとっては、笑い話どころではない。
あれだけ必死に努力して、試験に備えたのに。
当日、風邪を引いて試験を受けられないとは。
当然、俺は試験に落ちた。
そもそも試験、受けてないんだから落ちるのは当たり前だ。
イーニシュフェルト魔導学院に入れなかった俺は、地元の魔導師養成学校に入るしかなかったのだが…。
この件で、俺を持ち上げていた全ての人間が、俺に失望した。
両親も。他の家族も。
周囲の人間も皆。
皆俺がイーニシュフェルト魔導学院に合格するものと思っていたから、俺に期待していたのに。
その期待に俺が応えられないと知るや、皆が俺に興味をなくした。
両親からははっきりと、「お前には失望した」と言われた。
「お前に期待なんてするんじゃなかった」と。
「もうお前がどうなろうと知ったことではないから、好きにしろ」とも。
風邪を引くなんて、俺の実力云々の話ではないのだが。
俺はそれまで、なまじちやほやされていたものだから。
そんな風に、いきなり手のひら返しされて…内心、酷く驚いた。
嘘でしょう?皆あれほど俺に期待してくれていたのに。
皆、俺を大事にしてくれていたのに。
たった一度失敗しただけで、しかもその失敗は俺のせいじゃなくて、ただ体調を崩したってだけなのに。
何で、こんな虫けらみたいに扱われるの?
今まで一度もこんな風に蔑ろにされたことはなかったから、いきなり手のひらを返されて、俺は困惑した。
どうすれば良いのか分からなかった。
キュレムさんや、俺の弟にしてみれば、そのくらいのこと、と鼻で笑うのだろうけど。
俺は蔑ろにされることに全く慣れていなかったから、誰からも期待されなくなるのは辛かった。
悲しかった。何で一度の失敗で、ここまで嫌われなければならないのかと。
そして、俺は知ったのだ。
期待していたのは俺ではなく、ただ俺の才能だけだったのだということに。
イーニシュフェルトにも入れない、肝心なときに失敗する愚か者は、誰からも期待なんてされないのだ。
誰の期待も、愛情も信頼も、たった一日でなくした俺は。
自分がどれほど、薄っぺらいものにすがっていたのかを知った。
どれだけ努力しようが、必死に歯を食い縛って、辛い思いをして研鑽を積もうが。
一度失敗すれば、全部が終わりなのだ。
俺が積み重ねてきたものなんて、ほんのちょっと机を揺らしたら、全て崩れてしまうほどに脆く、弱いものだったのだ。
俺なんて、所詮はその程度の人間だったのだ…。
今まで思い上がってきたぶん、それを思い知らされたのはショックだった。
周りに誰もいなくなってしまった俺は、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
最早、俺という人間に価値はない。
誰も期待してないし、誰も俺を大事になんてしてくれない。
一人ぼっちだ。
それ以来、周囲の期待は、全て弟に注がれることになった。
今まで全く見向きもされなかった弟は、いきなり周囲から期待されるようになって、大層喜んだ。
今度は自分の番だ、と思ったのだろう。
その通り。確かに、弟の番だ。
今までずっと俺が独占してきたんだから、今度は弟が大事にされるべきだ。
しかし。
今まで当然のように自分の周りにあったものが、突然なくなるのと。
今までなくて当然だったものを、いきなり手に入れるのとでは、全く意味が異なる。
生まれて初めて、俺は挫折を味わった。
そして、二度と立ち直ることは出来なかった。