神殺しのクロノスタシス1
…危ねぇ。
ルイーシュが庇ってくれなかったら、今頃痛いじゃ済まないことになってたかも。
「…外したか」
グリードの後ろに、まるで女神のように神々しく降臨したのは。
禍々しい魔力を持つ、『禁忌の黒魔導書』の化身。
「…誰だ?お前」
「…我が名はファントム」
ファントムさん。それがこの禁書の名前。
「そうかい。中二病な名前をどうも…」
グリードを脱ひきこもりさせることに必死で、忘れていたけども。
俺達の目的は、こいつの社会復帰ではなく。
失踪した五人の行方を探すことだったんだ。忘れてたよ。
こいつが脱ひきこもりすればそれで万事解決と思ってたが、そんなはずはなかった。
「なぁ、ファントムさんよ…。俺達、この辺で失踪した五人の男を探してるんだけど…。何か覚えはないもんかね」
「…」
「なぁグリード。お前でも良いぞ。何か知ってることがあるなら教えて欲しいんだけど」
グリードをぎろりと睨み付けると、彼はひっ、と声を出した。
成程。何か知ってる顔だな、それは。
と言うか、お前だろう。
「言え。言わなきゃ舌を引きちぎるぞ」
「引きちぎったら言えないじゃないですか、キュレムさん」
あ、そうだった。
「じゃあ頭をねじ切るぞ。言え!」
「頭ねじ切っても言えないと思いますけど…」
あ、そうだった。
「じゃあもう何でも良いから言えっての!失踪した五人は何処だ!?お前は、あの五人に何をしたんだ!」
このびびりチキンヒキニート自宅警備員に、人を殺す度胸などない。
間違いなく、五人は生きている。
何処かに隠しているに違いない。
「そ、それは…」
口ごもるグリードに、もう一発鉄拳を食らわせてやろうとしたら。
その前に、ファントムが答えた。
「その五人なら、私の作った空間に閉じ込めてあるよ」
「あ…?」
閉じ込めてある、だと?
「その男は、かつて自分を苦しめた男達を監禁し、生かさず殺さず苦しめて、その様子を眺めて笑っていたんだ」
「…」
…へぇ。
グリードはファントムの言葉を否定せず、ただ黙って項垂れていた。
随分と…悪趣味なことをするじゃないか。
「こいつ一人でそんなことが出来るはずがない。お前が力を貸したんだろう?」
「勿論だ。それが私とこの男の、契約だった」
成程ね。
『禁忌の黒魔導書』たるファントムの力を使えば、不可能ではない。
むしろ、容易いことのはず。
…いや、待て。
今こいつ、何て言った?
…契約…だった?
何で、過去形…。
「…だから、これで契約は完遂された」
ファントムは、グリードの首を両手で掴んだ。
ルイーシュが庇ってくれなかったら、今頃痛いじゃ済まないことになってたかも。
「…外したか」
グリードの後ろに、まるで女神のように神々しく降臨したのは。
禍々しい魔力を持つ、『禁忌の黒魔導書』の化身。
「…誰だ?お前」
「…我が名はファントム」
ファントムさん。それがこの禁書の名前。
「そうかい。中二病な名前をどうも…」
グリードを脱ひきこもりさせることに必死で、忘れていたけども。
俺達の目的は、こいつの社会復帰ではなく。
失踪した五人の行方を探すことだったんだ。忘れてたよ。
こいつが脱ひきこもりすればそれで万事解決と思ってたが、そんなはずはなかった。
「なぁ、ファントムさんよ…。俺達、この辺で失踪した五人の男を探してるんだけど…。何か覚えはないもんかね」
「…」
「なぁグリード。お前でも良いぞ。何か知ってることがあるなら教えて欲しいんだけど」
グリードをぎろりと睨み付けると、彼はひっ、と声を出した。
成程。何か知ってる顔だな、それは。
と言うか、お前だろう。
「言え。言わなきゃ舌を引きちぎるぞ」
「引きちぎったら言えないじゃないですか、キュレムさん」
あ、そうだった。
「じゃあ頭をねじ切るぞ。言え!」
「頭ねじ切っても言えないと思いますけど…」
あ、そうだった。
「じゃあもう何でも良いから言えっての!失踪した五人は何処だ!?お前は、あの五人に何をしたんだ!」
このびびりチキンヒキニート自宅警備員に、人を殺す度胸などない。
間違いなく、五人は生きている。
何処かに隠しているに違いない。
「そ、それは…」
口ごもるグリードに、もう一発鉄拳を食らわせてやろうとしたら。
その前に、ファントムが答えた。
「その五人なら、私の作った空間に閉じ込めてあるよ」
「あ…?」
閉じ込めてある、だと?
「その男は、かつて自分を苦しめた男達を監禁し、生かさず殺さず苦しめて、その様子を眺めて笑っていたんだ」
「…」
…へぇ。
グリードはファントムの言葉を否定せず、ただ黙って項垂れていた。
随分と…悪趣味なことをするじゃないか。
「こいつ一人でそんなことが出来るはずがない。お前が力を貸したんだろう?」
「勿論だ。それが私とこの男の、契約だった」
成程ね。
『禁忌の黒魔導書』たるファントムの力を使えば、不可能ではない。
むしろ、容易いことのはず。
…いや、待て。
今こいつ、何て言った?
…契約…だった?
何で、過去形…。
「…だから、これで契約は完遂された」
ファントムは、グリードの首を両手で掴んだ。