神殺しのクロノスタシス1
アトラス・ルシェリート。

それが、彼の名前だった。

アトラスさんは魔導師ではないし、そもそも魔法は使えない。

それなのに、何故彼がイーニシュフェルト魔導学院に来たのか。

その理由は簡単である。

彼は帝都にある聖魔騎士団附属の剣士養成校からイーニシュフェルト魔導学院に来た、所謂交換留学生だったのだ。

とは言っても、イーニシュフェルト魔導学院はその名の通り、魔導師の学校だ。

魔法が使えない彼を、一体何故学院長が受け入れたのか…その辺りの事情は、学院長に聞いてみなければ分からないが。

とにかくアトラスさんはイーニシュフェルト魔導学院にやって来ることになった。

しかし、あの頃私達の学年は同じだったけど、クラスは別々だった。

だから、隣のクラスに交換留学生が来たという話は聞いていたが、会ったことは一度もなかった。

話したこともなければ、顔を見たこともなかった。

アトラスさんの方も同じだったんじゃないだろうか。

いや、私の「灰かぶり」の髪は目立つから、姿を見たことくらいはあったかもしれないけど。

そんな私達が、何故今こうして、夫婦として子供を育てているのか。

そのきっかけは、年に二回に行われるイーニシュフェルト魔導学院の全校魔導模擬戦闘試験だった。
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