神殺しのクロノスタシス1
しばらくすれば帰ってくると思って、学院長室で待っていたのだが。

羽久は、一向に戻ってこなかった。

シュニィちゃんからの連絡もなし。

羽久本人と連絡を取ろうとしても、まるで通じない。

夜になっても羽久は学院に戻ってこなかった。

さすがの私も、心配になってくる。

いつも傍にいる子がいきなりいなくなったら、そりゃ誰でも心配するだろうけど。

羽久は何処に行ったんだろう。

どうして行ってしまったんだろう。

まさか家出…とかじゃないよね?

思い当たる節があるとしたら…午前の…あのおやつ事件だが。

しかし、あれで羽久がへそを曲げて出ていってしまうとは考えられない。

ましてや、授業をすっぽかしてまで。

羽久が私の秘蔵のお菓子を摘まんでしまうのはいつものことだし、それで私が怒るのもいつものこと。

私だって別に、本気で怒っている訳じゃない。

そんなの、羽久だって分かりきっているだろうに。

それとも、堪忍袋の緒が切れたのだろうか?

学院長の癖に菓子に執着してみっともない、もう愛想が尽きた、って?

有り得なくはないかもしれないが、私のおやつ癖は、今に始まったことではない。

羽久だって慣れてるだろうし、おやつで喧嘩するのはご愛嬌と言うか…。特に珍しくもないいつものやり取りに過ぎない。

羽久が、あんなことでへそを曲げて出ていくはずがない。

なら、羽久が何処かに消えてしまったのは何故だ?

私なりに羽久が忽然と姿を消してしまった理由を、あれこれ考えてみたが。

出てきた結論は、一つしかなかった。

でもこれは、どうしても認めたくなかった。
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