神殺しのクロノスタシス1
セルフサービスの、大衆食堂。

…まぁ、安さとそこそこの美味しさは保証されてるよな。

マキナスって、『オプスキュリテ』ではトップ2の立場なのに、割と大衆思考なんだなって。

俺は特に食べ物に頓着しないので、何でも構わないけど。

「君が今考えてることを当ててあげよう」

「あ?」

「『こいつ、そこそこ金持ちの癖して、大衆食堂に飯食いに来るのかよ、セコッ』って思ってるでしょ」

「そこまでは思ってないよ…」

セコいとまでは思わないよ。前半はちょっと思ったけどさ。

「理由を教えてあげよう。…僕はね、食べ物なんて、そこそこ美味しくて、充分な量があれば、それで良いと思ってるからだよ」

「…」

「つまりね、食べ物にお金を使いたくないんだよ。高級店で食事をするお金があるなら、自分は粗末なものを食べたとしても、何も食べられずに飢えている人間の為に、一個でもパンを届けたいと思ってね」

「…!」

…それって。

「後で見せてあげるよ。この国の…暗い部分をね」

マキナスはそう言って、不敵に笑った。

…そんな笑いながら言うことではないような気がするが。

暗い部分。暗い部分…か。

俺も…覚えがない訳じゃない。
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