神殺しのクロノスタシス1
『オプスキュリテ』は良いところだ。

何か個人的な用事がない限り、地下に引きこもったまま暮らせるというのが、素晴らしく良い。

アジトには『オプスキュリテ』メンバー専用の食堂があるし。

洗濯物は乾かないが、乾燥機があるし。

その他生活必需品は、一通りアジトの中に備蓄されている。

薄暗いのは少々珠に傷だが、でもそれだって慣れる。

むしろ外の眩しさが目に辛いくらい。

出たくなければ、いくらでも引きこもっていられるのだ。

生活必需品以外に欲しいものがあれば、外に出て自分で買いに行かなければならないが…。俺は別に、特別欲しいものなんてなかったし。

人によっては息苦しいであろうこの生活だが、俺はこの環境に、あっという間に順応してしまった。

前世がモグラなのかもしれない。

部屋に窓はなく、灯りと言えば薄暗い電球だけ。

でもむしろ、それが目に心地よかった。

すると。

「…また引きこもってるの?」

「あ、マキナス…」

一人でぼんやりと、土の天井を見上げていたところに。

マキナスがやって来た。

「何?仕事の時間はまだじゃないのか」

「そりゃまだだけどさ…。ジュリスが言うんだよ。『サナキがどうしてるか見てきてくれ』って。気に入られてるねぇ」

…何でだろうな?

何がジュリスのお眼鏡に適ったのか。

「折角時間もあるんだし、地上に出て買い物でもしてきたら?」

「いや…。買いたいものないし…」

大体、字もまともに読めないんだから。

さすがに数字は分かるから、買い物は出来ると思うが…。

そこまでして外に出る必要性を感じない。

「引きこもりだなぁ…。楽しいの?土の天井なんか見上げて」

「どうだろう…。なんか、実家のような安心感を感じる…」

「…前世、モグラなの?」

そうかもしれない。

あと、そんなドン引きした顔で見るな。

今は人間だから。
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