神殺しのクロノスタシス1
「…!?」

「羽久」

ルーデュニア聖王国から、遠く離れたその場所で。

しらみ潰しに羽久を探していた私とクュルナちゃんは、ようやく見つけ出した。

実に、千年の月日を要した。

というのも、ルーデュニアと、他の時空では、時間の流れが違う。

ここではたった数日でも、ルーデュニアでは何年もたっているなんてことが有り得るのだ。

その逆もまた然り。

私とクュルナちゃんは、実に千年かけて、ただ一途に羽久を探し続けてきた。

見つかるまで探す、という言葉に嘘はない。

あるはずがない。

そして今、ようやく見つけた。

「羽久…!良かった、無事で…」

「…!?」

私は、羽久の手を取ろうとした。

クュルナちゃんも、泣きそうな顔で羽久にすがろうとした。

しかし。

羽久は、私達の顔を見て、怯えた表情で後ずさった。

明らかに、私達を怖がっていた。

「…君達、誰?」

羽久の傍にいた若い男性が、羽久を守るように前に出た。

「…あなたこそ、誰です」

クュルナちゃんが、殺気すら滲ませた声でそう言った。

千年もの間探し続けてきた人物が、目の前にいるというのに。

ここまできて、それを阻もうとする者が現れたのだから…怒るのは当然だ。

「悪いけど彼はうちの者なんでね。君達が何者か知らないけど、アポ取って来てもらわないと」

「ふざけないで。あなたと話なんてしていません。その人を返してください」

「…それは無理な相談だな」

羽久を庇っているのは、二人。

一人は人間。

そして、もう一人は。

羽久の前に出て、じっとこちらを睨んだ。

「マキナス、サナキ連れて先に行け。こいつらとは俺が話をつける」

そのもう一人が、後ろの青年に言った。

…サナキ?

「でも、ジュリス。一人じゃ…」

「怯えてるだろ、サナキが。早く行けよ」

「…分かったよ。サナキ、行こう」

「…俺を追ってきたんだ。あいつらが、俺を捕まえる為に…」

サナキと呼ばれた羽久は、震えながらそう言った。

間違いない。

やはり羽久は、羽久じゃないのだ。

「大丈夫だよ。ジュリスが追い払ってくれるよ。さぁ、戻ろう」

「…」

マキナスと呼ばれた彼は、羽久を連れて私達の前から逃げた。

当然クュルナちゃんが追おうとしたが、私はそれを制した。

…まずは、ジュリスというこの子と話すのが先だ。
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