神殺しのクロノスタシス1
…と、言っても。

俺達の祝杯は、大変ささやかなものである。

「キノファさん。今日夕飯、すき焼きしようか。…鶏肉で」

「あぁ…良いな」

事務所を出てから、イズチとウルミはそれぞれ自分の車に乗って帰宅し。

事務所から徒歩15分のところに家がある俺とアシバは、一緒に歩いて帰宅していた。

帰りに、買い物に寄って。

しかも、夕飯の相談までしながら。

そう。実は俺とアシバは一緒に住んでいるのである。

別に何やら妖しい関係という訳ではない。単なるルームシェアだ。

それも、節約の為にな。

イズチとウルミはそれぞれ実家暮らしだから家賃がかからないが、俺とアシバは実家から離れているので、ならいっそ二人で一つの部屋を借りて住もう、ということになり。

間取り2Kのアパートに、半額ずつ家賃を出し合って、家事その他分担しながら、特に問題もなく生活している。

所長とその従業員が一つ屋根の下なんて、色々揉め事があるんじゃないかと思われるかもしれないが。

元々俺とアシバは、学生時代先輩後輩として仲が良かったので、一緒に生活していても苦痛ではなかった。

むしろ、生活にメリハリがついて快適である。

とはいえ、二人共薄給なので。

すき焼きは、大抵鶏肉でやる家庭である。

他の具材も、ネギと豆腐とえのきだけ。

それでもいつもに比べたら、大変豪華な夕飯である。

ちなみに夕食を作る係は、ほぼアシバである。

彼の方が料理が上手いからである。

俺はアシバほど料理が上手くないので、作るにしても朝食だけ。

代わりに掃除洗濯は、俺がメインで担当している。

今のところこれで、特に問題なく暮らせている。
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