神殺しのクロノスタシス1
「俺は、お前達に従うつもりはない。それ以外、言うことは何もない」

…成程。

その敵意に満ちた目を見れば、彼の言いたいことはよく分かる。

「従ってくれとは言わないよ」

「なら、何を言いに来た」

君が『死火』を使って、ルーデュニアの人々を殺したのかどうかを聞きたかったんだけど。

それはもう済んだから。

「出来れば、友好的に私達の仲間になってくれないかなと…」

「断る」

少しは考えてくれても良いじゃん。

そんな素っ気なく断られると、私も傷つくなぁ。

「どうしても駄目?」

「俺はお前達に従わない」

従って欲しいのではなく、仲間になって欲しいのだが。

そこのところ、どうやら私と彼の間には誤解があるようだ。

「まぁ、こんな小汚ないおっさんの味方にはなりたくないよな…。その気持ちは分かる」

ちょっと。羽久何頷いてるの。

いくらなんでも私に失礼過ぎでは?

傷つくからやめて。

「私達は君の敵じゃないんだけどね」

「…俺はそんなことは信じない。俺の敵になるなら、殺すだけだ」

…そっか。

こんなところで『死火』の持ち主の君と本気でやり合ったら、死者が出そうだね。

「…こいつ、黙らせるか?」

血の気の多い羽久が、じろっ、とこちらを見た。

そりゃまぁ、私と羽久が組めば、『死火』を持つ彼にも勝てるだろうけど…。

私は、彼を屈させて従わせたい訳ではない。

「…いや、今日は出直そう」

一度でも彼に杖を向けたら、彼は絶対に私達を信じてくれないだろう。

だから、攻撃しちゃいけない。

「…また会いに来るよ」

「…二度と来るな」

さて、それはどうかな。

会いたくなくても、会わなきゃならないことになるかもしれないね。



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