神殺しのクロノスタシス1
探偵事務所にエルクを呼んだのは、他でもないアシバだった。
妹の件について、もう少し詳しく話を聞きたいとのことで、わざわざ呼びつけたのだ。
そして、それが間違いだった。
その日、エルク・シークスは、先日姿を見たときとは違う、異様な雰囲気を纏っている…ような気がした。
その雰囲気を最初に感じ取ったのは、月読だった。
「…キノファ。逃げた方が良い」
エルクの姿を見るなり、月読はそう言った。
「逃げる…?どうして?」
アシバ達に聞こえないように聞き返したが。
「最初からおかしいと思ってた。あの人…。あぁ、でももう手遅れかもしれない」
「手遅れって…何が…」
聞かなくても、答えはすぐに分かった。
エルク・シークスが、「正体」を現してくれたからだ。
「さてと…。じゃあ、妹さんについて覚えていることを、もう一度詳しく聞かせてもらえますか?」
何も知らないアシバが、改めてエルクに尋ねた。
しかし。
「あぁ、妹…。妹なんて、本当はいないんだ」
「え…?」
「全ては布石だった。私に妹なんていない。依頼は狂言だったんだよ」
「!?」
さすがのアシバも、イズチもウルミも、言葉を失った。
「布石…狂言…?それは、どういう…」
「まだ分からないのか?愚かな人間だ…。お前達は、騙されていたんだよ」
エルク・シークスの手のひらの上で、踊らされていた。
エルクが証言する出身地で聞き込みをしても、何の情報も得られなかった理由がこれだ。
全ては、彼のついた嘘だった。
気がついたときには、全て手遅れ。
「何だよ、それは…。あんた、俺達をからかってたのか?」
イズチが、嫌悪感をあらわにして詰め寄った。
「からかった?私はお前達のような脆弱な人間をからかうほど、暇ではない」
「なら、何の為に…」
「私はこの探偵事務所に…そして『死火』に近づく為に来た」
…あぁ。
月読が感じ取った不信感は、これだったのだ。
妹の件について、もう少し詳しく話を聞きたいとのことで、わざわざ呼びつけたのだ。
そして、それが間違いだった。
その日、エルク・シークスは、先日姿を見たときとは違う、異様な雰囲気を纏っている…ような気がした。
その雰囲気を最初に感じ取ったのは、月読だった。
「…キノファ。逃げた方が良い」
エルクの姿を見るなり、月読はそう言った。
「逃げる…?どうして?」
アシバ達に聞こえないように聞き返したが。
「最初からおかしいと思ってた。あの人…。あぁ、でももう手遅れかもしれない」
「手遅れって…何が…」
聞かなくても、答えはすぐに分かった。
エルク・シークスが、「正体」を現してくれたからだ。
「さてと…。じゃあ、妹さんについて覚えていることを、もう一度詳しく聞かせてもらえますか?」
何も知らないアシバが、改めてエルクに尋ねた。
しかし。
「あぁ、妹…。妹なんて、本当はいないんだ」
「え…?」
「全ては布石だった。私に妹なんていない。依頼は狂言だったんだよ」
「!?」
さすがのアシバも、イズチもウルミも、言葉を失った。
「布石…狂言…?それは、どういう…」
「まだ分からないのか?愚かな人間だ…。お前達は、騙されていたんだよ」
エルク・シークスの手のひらの上で、踊らされていた。
エルクが証言する出身地で聞き込みをしても、何の情報も得られなかった理由がこれだ。
全ては、彼のついた嘘だった。
気がついたときには、全て手遅れ。
「何だよ、それは…。あんた、俺達をからかってたのか?」
イズチが、嫌悪感をあらわにして詰め寄った。
「からかった?私はお前達のような脆弱な人間をからかうほど、暇ではない」
「なら、何の為に…」
「私はこの探偵事務所に…そして『死火』に近づく為に来た」
…あぁ。
月読が感じ取った不信感は、これだったのだ。