神殺しのクロノスタシス1
「夢?こんなところで?」

昨夜見た夢の話をすると、同室の女達が、馬鹿にしたような笑い声をあげた。

「夢なんて、馬鹿馬鹿しい。こんなところで夢なんて見るものじゃないよ」

「寝てるときに見る夢だよ」

将来に対する希望の方じゃない。

こんなところで、将来に何の希望も持てないことは、私だって分かりきってる。

それなのに、彼女達は笑うのをやめなかった。

「同じことだよ。夢を見るなんて、良い気なもんじゃないか」

「そんなに余裕なら、明日の掃除当番は任せても良さそうだね」

一人が冗談めかしてそう言うと、皆どっと笑った。

そして、笑いながら立ち去っていった。

「…」

…昨夜見た夢の話をしてみたかっただけなのに。

掃除当番を押し付けられることになるとは。

喋らなければ良かった。

私は頭の中で、昨夜の夢を再び思い出した。

いくつもの家や、お店や、学校や聖堂が建ち並ぶ街を、私は高いところから見下ろしている。

でも次の瞬間に、その綺麗な景色が、一瞬にして焼け野原になる。

そして、意識を失うのだ。

…なんとも、不思議な夢ではないか。

私は同じ夢を、今まで何回も見ている。

一体あの夢が何を意味するのか、未だに分からない。

分からないけど、私は週に二、三回はあの夢を見る。

何なんだろう、あの夢…。

ぼんやりと考えていた、そのとき。

「おい、お前!何をボーッとしてる!」

硬い革の鞭が、私の肩に振り下ろされた。

あまりの痛みに、悲鳴をあげそうになるのをぐっと我慢する。

悲鳴なんてあげようものなら、余計殴られるに決まっているからだ。

「さっさと働け!」

「…済みません」

私は小さく謝って、作業に戻った。

先程まで私と話していたルームメイトが、くすくす笑っているのが見えた。
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