神殺しのクロノスタシス1
憲兵か警察か知らないが、呼ばれると大変困るので。

仕方なく、俺達はすごすごと引き下がり。

夜中に潜むことにした。

勿論、バレたら憲兵どころではない。

が、情報を得るには図書館以上に適した場所はないと判断し…夜中にこっそり忍び込んだのは良いものの。

これは、大きな間違いであった。

警備員に見つかったとか、そういうことではなく。

完全に無駄足に終わった、という意味で。

「…何もないじゃん」

「うーん…」

これが図書館?

本そのものの数も少ないし、置いてある本も酷く…何て言うか…偏っていた。

国の偉人や王家についての本なら腐るほどあるけど、国の制度や成り立ちに関する本は全くない。

「見ろよ。ひたすら偉人を褒め称える本だけだぞ」

「うーん…。偉人の本…嫌いではないけど、こればかりじゃね…」

本の虫であるシルナも、これには苦笑い。

肝心の知りたいことが、何も書いてない。

「これじゃ、大した情報も得られない」

「まぁ、これでも何冊か読めば、ある程度国の情勢が推測出来るんだろうけど…」

この場で何冊も読んでる時間はない。

何せ俺達は、不法侵入なのだから。

「新聞は?この図書館、新聞置いてないのか」

「あ、そっか新聞…って、薄っ」

「うわぁ…。ティッシュペーパーかよ…」

新聞って、十枚くらいの紙面で一部になってると思うんだけど。

少なくともルーデュニアではそうなんだけど。

この国の新聞、一日でたった二枚の紙しかない。

どんな記事が載ってるのかと、軽く読んでみると。

「…」

王家は国民達の為にこんなことをしている。故に国民はそれに感謝して、王家を崇め称えよ。

そんなことしか書いてない。

本当にそんなことしか書いてない。

「…これが新聞か?」

「新聞…なのかなぁ…?」

シルナも疑問系。

新聞っていうのは、否定意見も賛成意見も、賛否両論の記事があるものだと思っていた。

この記事、とにかく賛成記事しかない。

批判なんてとんでもない、と言わんばかり。

しかしそんな新聞でも、分かったことがある。
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