神殺しのクロノスタシス1
「それなのに、あなたは…あなたと学院長だけは、私を普通の女の子だって言ってくれました。それだけで、私…凄く、嬉しいです」

「シュニィ…」

「…ありがとう、アトラスさん。あなたに会えて良かったです」

私は、みっともなく溢れてきた涙を手で拭った。

こんなことで泣くなんて、馬鹿みたいだ。

涙など、とうに凍てついたはずだったのに…。

「…シュニィ」

アトラスさんは、私をそっと腕の中に抱き締めた。

「あ、アトラスさん…?何を…」

「お前は普通の女の子だよ、シュニィ。誰にも、何も言わせない。お前を悪く言う奴は、俺が、全員ぶっ飛ばしてやる。だから…もう、泣くな」

「…っ…」

私はアルデン人で。誰からも嫌われていて。

親にすら捨てられて。行き倒れて、皆にいじめられて…。

何の価値もない、生きているだけで迷惑な、そんな人間のはずなのに。

ずっと…そうだと信じて、生きてきたのに。

どうして、あなたは。

あなたは…こんなにも、優しくしてくれるんですか?

こんなことされたら、私は…。

「うぅ…っ…」

「よしよし…泣くな、シュニィ…。もう泣くな」

泣くなと言われて、優しく頭を撫でられる度に、余計に涙が溢れてしまった。

今までずっと一人で溜め込んできたものが、一気に溢れて止まらなくなった。

これまで受けてきた痛みや、苦しみが…何処かに消えてしまうような気がした。

この温かい涙が、全てを洗い流してくれるような…そんな気がした。
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