神殺しのクロノスタシス1
外の世界は快適だったが、収容所の外に出たからと言って、手放しで喜べるほど私の人生は甘くなかった。
収容所の暮らしを思うと、外の世界はあまりにも安楽だった。
外の世界と言うより、叔母の家が、だが。
叔母は、国の政府に関わる家柄だった。
この家柄の為に、叔母の家では、一般人の家庭とは比べ物にならないほど、生活レベルが高かった。
この家は、いつでも物が溢れていた。
国民の大半が毎日食べ物に困る日常を送っているのに、この家は、一日三回、充分な量の食事が並んだ。
衣服も、暖かな毛布もあった。
収容所の基準どころか、一般家庭と比べても、天国のような場所だった。
ついこの間まで地獄にいた私は、今でもたまに、「何で私はここにいるんだろう」と思ってしまった。
収容所にいるのが、すっかり当たり前になっていたのだろう。
ここにはこんなに物があるのに、今にも餓えて死にそうな人のところには、何もないのだ。
世の中の不公平さ、理不尽さを実感しない日はなかった。
叔母を憎んでいる訳ではない。私を助けてくれた叔母には、心から感謝している。
でも、思わずにはいられない。
ここに家族がいれば。
ここに両親がいてくれたら。
もっと早く、叔母が私に気づいて助けてくれていたら…と。
贅沢なのかもしれないが、どうしても私は、そう思ってしまった。
そして、私がいなくなった収容所はどんな風かを、いつも想像した。
私一人がいなくなったところで、収容所が何か変わるはずがないことは分かっている。
でも、私がいなくなった後、私がいたベッドは誰が使っているのだろう、とか。
私の後、誰が食堂婦の仕事についたのだろう、とか。
私が突然いなくなったことを、ルームメイト達はどう思ってるんだろう、とか。
収容所での惨めな日々のことを、思い出さない日はなかった。
思い出しても仕方ないと分かっていても。
収容所の暮らしを思うと、外の世界はあまりにも安楽だった。
外の世界と言うより、叔母の家が、だが。
叔母は、国の政府に関わる家柄だった。
この家柄の為に、叔母の家では、一般人の家庭とは比べ物にならないほど、生活レベルが高かった。
この家は、いつでも物が溢れていた。
国民の大半が毎日食べ物に困る日常を送っているのに、この家は、一日三回、充分な量の食事が並んだ。
衣服も、暖かな毛布もあった。
収容所の基準どころか、一般家庭と比べても、天国のような場所だった。
ついこの間まで地獄にいた私は、今でもたまに、「何で私はここにいるんだろう」と思ってしまった。
収容所にいるのが、すっかり当たり前になっていたのだろう。
ここにはこんなに物があるのに、今にも餓えて死にそうな人のところには、何もないのだ。
世の中の不公平さ、理不尽さを実感しない日はなかった。
叔母を憎んでいる訳ではない。私を助けてくれた叔母には、心から感謝している。
でも、思わずにはいられない。
ここに家族がいれば。
ここに両親がいてくれたら。
もっと早く、叔母が私に気づいて助けてくれていたら…と。
贅沢なのかもしれないが、どうしても私は、そう思ってしまった。
そして、私がいなくなった収容所はどんな風かを、いつも想像した。
私一人がいなくなったところで、収容所が何か変わるはずがないことは分かっている。
でも、私がいなくなった後、私がいたベッドは誰が使っているのだろう、とか。
私の後、誰が食堂婦の仕事についたのだろう、とか。
私が突然いなくなったことを、ルームメイト達はどう思ってるんだろう、とか。
収容所での惨めな日々のことを、思い出さない日はなかった。
思い出しても仕方ないと分かっていても。