神殺しのクロノスタシス1
「…水量が増加してるな…。雨でも降ったのか」
「…」
旅の途中、私達は増幅した河に出くわした。
近隣で雨でも降ったのか、かなり水が増えている。
歩いて渡れなくもない距離だが、気を付けなければ水に足を掬われそうだ。
渡るのを諦めても良いのだが…。
「…」
夕暮れまでに、宿のある村に辿り着くには、今この河を渡らなくては、間に合わないだろう。
仕方がない。
「…二十音、来なさい」
私は振り返って、子ガモのように私の後ろをついてくる二十音に手を伸ばした。
二十音は常にぼんやりした顔をしているが、私が声をかけると、急に輝き出す。
今回も、私が伸ばした手を、二十音はハッとして掴んだ。
しかも、両手でぎゅうっと握り締めるように掴んできた。
…何故両手?
「片方で良いんだよ。河を渡るから、気を付けてついてきなさい」
私は二十音の右手を振りほどき、左手だけを掴んで、慎重に河を渡った。
二十音は、素直についてきた。
何故か、とても嬉しそうだった。
ずっと閉じ込められていたせいで精神年齢が幼いから、水に入るのが楽しいのかもしれない。
呑気なものだ。
数分かけて河を渡り、向こう岸にたどりついた。
「ふぅ…」
無事に河を越えることが出来た。
「…ん?」
私はそのときに、河を渡り終えたにも関わらず、まだ二十音が私の手を離していないことに気づいた。
嬉しそうな顔で、私の手を握ったままだ。
何をしてるんだ、この子は…。
「もう離しなさい。河は渡ったんだから」
繋いでいた手を振り払うと、二十音は悲しそうな顔をして私を見つめ。
そして、空を掴む手を、のろのろと下に下ろした。
…何だ、その顔は。
二十音が何故そんな顔をするのか、あの頃の私には、まだ分からなかった。
「…」
旅の途中、私達は増幅した河に出くわした。
近隣で雨でも降ったのか、かなり水が増えている。
歩いて渡れなくもない距離だが、気を付けなければ水に足を掬われそうだ。
渡るのを諦めても良いのだが…。
「…」
夕暮れまでに、宿のある村に辿り着くには、今この河を渡らなくては、間に合わないだろう。
仕方がない。
「…二十音、来なさい」
私は振り返って、子ガモのように私の後ろをついてくる二十音に手を伸ばした。
二十音は常にぼんやりした顔をしているが、私が声をかけると、急に輝き出す。
今回も、私が伸ばした手を、二十音はハッとして掴んだ。
しかも、両手でぎゅうっと握り締めるように掴んできた。
…何故両手?
「片方で良いんだよ。河を渡るから、気を付けてついてきなさい」
私は二十音の右手を振りほどき、左手だけを掴んで、慎重に河を渡った。
二十音は、素直についてきた。
何故か、とても嬉しそうだった。
ずっと閉じ込められていたせいで精神年齢が幼いから、水に入るのが楽しいのかもしれない。
呑気なものだ。
数分かけて河を渡り、向こう岸にたどりついた。
「ふぅ…」
無事に河を越えることが出来た。
「…ん?」
私はそのときに、河を渡り終えたにも関わらず、まだ二十音が私の手を離していないことに気づいた。
嬉しそうな顔で、私の手を握ったままだ。
何をしてるんだ、この子は…。
「もう離しなさい。河は渡ったんだから」
繋いでいた手を振り払うと、二十音は悲しそうな顔をして私を見つめ。
そして、空を掴む手を、のろのろと下に下ろした。
…何だ、その顔は。
二十音が何故そんな顔をするのか、あの頃の私には、まだ分からなかった。