神殺しのクロノスタシス1
何の予兆もなかったし、その兆候すらなかった。

本当に、突然私の前に現れた。








「…誰?」

その日、その瞬間。

私は、生まれて初めて羽久に出会った。

当然ながら、最初に会ったとき、私はそれが誰なのか分からなかった。

ただ、二十音の中身が別物であることに気がついて、思わずそう尋ねてしまった。

誰、と。

二十音が、二十音じゃなくなっている。

それだけは分かった。

二十音とこの子じゃ、魔力の質が違う。

「あんたこそ、誰?」

二十音じゃない二十音が、逆に尋ね返してきた。

私は最初、神祖の回し者か何かが、二十音の身体を乗っ取ったのだと誤解した。

「…私の二十音から、出ていけ」

我ながら、酷く冷たい声だった。

二十音が羽久であると知っていれば、あんな冷たいことは言わなかったのに。

当時の自分を殴りたくなる。

でも、あの頃は分からなかったのだ。

「その子は私の…」

「…はつね?羽久(はつね)は…俺だ」

「…へ?」

はつね?

二十音?

…羽久?

私の頭の中は、「はつね」で一杯になった。

それぞれの区別が全くつかなかったのである。

音だけならどちらも「はつね」なのだから、混乱するのは当たり前である。

「…君は誰なの?二十音…じゃないの?」

「二十音ってのは誰だよ?俺は羽久だ」

ごめん。

ちょっと、頭がこんがらがってきた。
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