神殺しのクロノスタシス1
二十音の身体は、最初の持ち主であった二十音よりも、次に出てきた羽久の方が気に入ったのか。

あれ以来、二十音よりも羽久である時間の方が長くなった。

二十音が出てこなくなったのは寂しいが、でも、代わりに羽久がいるし。

羽久は、口数の少ない、舌足らずな二十音とは大違いだった。

普通に喋れるし、たまに毒を吐くけど、二十音よりはずっと人間らしい子だった。

二十音と羽久、どちらが良いか、なんて比べられるものではない。

どちらがオリジナルか、なんて考えるものでもない。

最初は、二十音が一番目で、羽久が二番目、なんて考えていたけれど。

よく考えたら、そうじゃないのかもしれない。

もしかしたら、羽久の方が先だったけど、偶然二十音がずっと出てきていただけなのかもしれないし。

もしかしたら、この身体には二十音と羽久の人格がいて、その子が一番目なのかもしれない。

ただ、表に出てきていないだけで。

二十音の中に、何人の人格がいても構わない。

その誰もが、私にとっては愛しい二十音の一部なのだから。
< 486 / 669 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop