神殺しのクロノスタシス1
第三帝国騎士官学校は、国内では上位に分類される学校である。

第三帝国騎士官学校は、国を守る帝国騎士を育てる養成校の一つ。

ちなみに、第三と言うだけあって、第一と第二もあるのだが。

第二帝国騎士官学校は残念ながら試験に落ち、第一の帝国騎士官学校は、レベルが高過ぎてそもそも受験すら出来なかった。

第一帝国騎士官学校にいるのは、本物の天才…もとい、化け物のような人達だと聞く。

ましてやそこの主席生徒なんて、もう想像も出来ない。

きっと、さぞや優秀な帝国騎士になっていることだろう。

そんな中、受かったのが第三帝国騎士官学校。

第三に受かっただけでも、国内では相当に優秀であると言われる。

学校には、俺を含めて帝国貴族の子女達が集まっている。

ここで、将来帝国騎士団に入る為に、勉学や剣術の稽古に励むのだ。

そして俺はこの学校の三年次で、一番優秀な主席生徒として知られていた。

厳格で、冷静で真面目で、アルヴァール家の次期当主に相応しい、優秀な生徒。

それが、エガルテである「俺」だった。

でも、「私」は違う。

本当の私は、女の子の格好をしたい、女の子として生きたいと願う、一人の少女でしかなかった。

その思いが高じて、私はこうして休みの日に、こっそりと女装して出掛けているのだ。

最初に女物の服を買ったときのことは、今でも忘れられない。

男なのに、女物の服を売るお店に一人で入るのは、多大な勇気を要した。

おまけに、店員さんが屈託のない笑顔で、「今日は何をお探しですか?」なんて聞いてきたのだ。

私は目を白黒させながら、「ちょ、ちょっと彼女にプレゼントを…」と、用意しておいた言い訳を使った。

我ながら下手くそな嘘だが、どうやら信じてもらえたようで。

あくまでも「彼女へのプレゼント」として、服を選んでくれた。

こうして買ったのが、白いブラウスと、ピンクのレースのスカートだった。

買った後、私はすぐに買ったばかりの服を袋から出し、自分が持ってきた紙袋に移した。

お店には申し訳なかったけど、自宅に帰ったときに女物のブランドの袋を持っているのを見られたら、怪しまれると思ったから。

こんな苦労をして買った服を、私は深夜、皆が寝静まった後に、こっそりと着てみた。

あのときの感動は、今でも鮮明に覚えている。
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