神殺しのクロノスタシス1
エヴェリカの言う通りだ。
これは、俺が軽率だった。
「ごめん。嫌なこと言って」
「ううん。気にしないで」
オカマとか、気持ち悪いとか可哀想とか。
余計なお世話じゃないかよ。
自分が当事者だったら、同じ悩みを抱えていたら、彼らは同じことが言えるのだろうか。
関係ないから、そんな無責任なことが言えるのだ。
誰だって、生まれもった身体と、心が違っていたら…戸惑うし、驚くし、悩みに悩み抜くだろう。
その点、男を演じて、今まで周囲の期待を一切裏切らなかったエヴェリカは、立派な奴だ。
「皆が君みたいに、障害のことを理解してくれる人ばかりだったら…話な簡単だったのに」
そうは行かないのが、世知辛い世の中…ってことか。
「貴族でもある両親が、私の障害を理解してくれるとは思えない。理解してくれたとしても…きっと私に落胆するよ」
「…」
「うちにはもう跡継ぎがいないんだ、って。私がこれまで、こんなに大事に育てられてきたのは、私が男の身体をしているからなんだ」
…酷い話だよな。
女だったら、蔑ろにしても良いってか。
男にしか価値がないってか。
一度ぶっ飛ばしてやりたいけど、でも、貴族ってのはそういうものだ。
「そう思うと、家族には言えない。ずっと騙してたことになるんだもの…」
「…エヴェリカ…」
「サナキ君だけでも、知ってもらえて良かった。これで、本当の自分を誰も知らないまま、人生を終えることはなくなったんだから」
ちょっと、おい。
それはどういう意味だ。
「エヴェリカ」
「分かってる。別に遺言って訳じゃないよ」
エヴェリカは、笑いながらそう言った。
「ただ、このまま誰にも知られずに死ぬのは嫌だなーって、ずっと思ってたから。誰かに知ってもらえて良かった。一人だけでも」
「…」
「…どうしたら良いのかな、私。どうするのが正解なんだろ」
…めちゃくちゃ悩んでいらっしゃる。
正直、もう俺には重い悩みだ。
どんな言葉も、当事者でないお前に何が分かる、と思われそうで…。
自分の中に、自分じゃない他の自分がいる。
その気持ちなら分かる。
そして。
「…エヴェリカ」
「何?」
「ちょっと…紹介したい人がいる。他にもう一人、障害のことを話しても良いかな」
「えっ」
ある意味では博打だし、そんなことしても何の解決にもならないかもしれない。
だけど、あいつなら。
こういうことは、俺よりずっと適任のはずだ。
「もう一人…?それは…サナキ君の知り合い?」
「うん」
「信用…出来る人?」
「大丈夫。言い触らそうにも、言い触らす友達いないから、あの人」
秘密を漏らすような奴でもないから、安心して会える。
これは、俺が軽率だった。
「ごめん。嫌なこと言って」
「ううん。気にしないで」
オカマとか、気持ち悪いとか可哀想とか。
余計なお世話じゃないかよ。
自分が当事者だったら、同じ悩みを抱えていたら、彼らは同じことが言えるのだろうか。
関係ないから、そんな無責任なことが言えるのだ。
誰だって、生まれもった身体と、心が違っていたら…戸惑うし、驚くし、悩みに悩み抜くだろう。
その点、男を演じて、今まで周囲の期待を一切裏切らなかったエヴェリカは、立派な奴だ。
「皆が君みたいに、障害のことを理解してくれる人ばかりだったら…話な簡単だったのに」
そうは行かないのが、世知辛い世の中…ってことか。
「貴族でもある両親が、私の障害を理解してくれるとは思えない。理解してくれたとしても…きっと私に落胆するよ」
「…」
「うちにはもう跡継ぎがいないんだ、って。私がこれまで、こんなに大事に育てられてきたのは、私が男の身体をしているからなんだ」
…酷い話だよな。
女だったら、蔑ろにしても良いってか。
男にしか価値がないってか。
一度ぶっ飛ばしてやりたいけど、でも、貴族ってのはそういうものだ。
「そう思うと、家族には言えない。ずっと騙してたことになるんだもの…」
「…エヴェリカ…」
「サナキ君だけでも、知ってもらえて良かった。これで、本当の自分を誰も知らないまま、人生を終えることはなくなったんだから」
ちょっと、おい。
それはどういう意味だ。
「エヴェリカ」
「分かってる。別に遺言って訳じゃないよ」
エヴェリカは、笑いながらそう言った。
「ただ、このまま誰にも知られずに死ぬのは嫌だなーって、ずっと思ってたから。誰かに知ってもらえて良かった。一人だけでも」
「…」
「…どうしたら良いのかな、私。どうするのが正解なんだろ」
…めちゃくちゃ悩んでいらっしゃる。
正直、もう俺には重い悩みだ。
どんな言葉も、当事者でないお前に何が分かる、と思われそうで…。
自分の中に、自分じゃない他の自分がいる。
その気持ちなら分かる。
そして。
「…エヴェリカ」
「何?」
「ちょっと…紹介したい人がいる。他にもう一人、障害のことを話しても良いかな」
「えっ」
ある意味では博打だし、そんなことしても何の解決にもならないかもしれない。
だけど、あいつなら。
こういうことは、俺よりずっと適任のはずだ。
「もう一人…?それは…サナキ君の知り合い?」
「うん」
「信用…出来る人?」
「大丈夫。言い触らそうにも、言い触らす友達いないから、あの人」
秘密を漏らすような奴でもないから、安心して会える。