神殺しのクロノスタシス1
新しい家には、最初から嫌悪感しかなかった。

何せここは僕が生まれ育った家ではなく、新しい父がずっと住んでいた家。

ようは、他人の家だ。

住み始めても、自分の家のような気がしなくて、落ち着かなかった。

そして、新しい父も。

一緒に暮らしていれば、義理の父でも家族になれるのかもしれない。

今までずっと得られなかった、父親の愛情を受けられるのかもしれない。

そんな淡い期待が、全くない訳ではなかった。

しかし、その期待は裏切られた。

僕は新しい父親に、馴染むことが出来なかった。

父の方が歩み寄ってくれなかった訳じゃない。

僕が馴染めなかったのだ。

最初、父は僕と仲良くなろうとして、あからさまに機嫌を取ってきた。

だけど僕は、そんな父の笑顔が、どうしても作り物のように見えた。

僕に気に入られようとするその笑顔は、何処か下心のようなものを感じさせて、僕に警戒心を抱かせた。

ハナから、父は僕と仲良くするつもりなんてなかった。

僕を我が子となんて思っていなかった。

ただ、一緒に暮らすにあたって、手懐けておいた方が何かと都合が良いと思っていただけなのだろう。

僕達親子は、ぎくしゃくしたまま、結局ただの同居人以上の関係にはなれなかった。

そして、そんな僕達家族のもとに。

新しい命が誕生した。
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