神殺しのクロノスタシス1
そして、魔導適性があり、保有魔力量が多かったとしても、それだけで優秀な魔導師になれる訳ではない。

そこから、また更に努力をしなければ。

魔法を使うには、まず魔力の使い方を学ばなければならない。

そして更に、魔法を使う為に、その魔法の理論…魔導理論を熟知していなければならない。

理論を「理解」せずに、魔法を使うことは出来ない。

私が生徒にこの話をするとき、いつもする例え話がある。

料理で例えると分かりやすい。

料理を作るには、まず包丁の扱い方や、火の使い方を知っていなければならない。

しかし、包丁や火の扱いを知っていても、それだけでは料理は出来ない。

その料理を作る為の、レシピを知っていなくては。

包丁を扱い、火を扱い、レシピ通りの行程を踏んで、初めてその料理が完成する。

話を魔法に戻すとして。

包丁と火の扱いが、魔力の使い方。

レシピが魔導理論。こういうことである。

どちらも知っていなくては、料理…つまり魔法は使えない。

レシピをたくさん知っていれば、作れる料理は多くなる。

それと同じで、魔導理論もたくさん知っていれば、使える魔法は多くなる。

優れた魔導師は優れたシェフのように、多くの魔導理論…レシピを知り、更に自分で新たなレシピを作ることも出来る。

その為には、多くの知識と経験が必要だ。

そしてその知識と経験を養う為に、私の学院はある。

ルーデュニア聖王国には、イーニシュフェルト魔導学院の他にも、たくさんの魔導学院がある。

学校の偏差値はピンからキリまであるが、私の学院は、実はルーデュニア聖王国で最高峰の魔導学院である。

自慢じゃないけど、うちの学校が一番頭良いよ、ってこと。

いや、自慢じゃないけどね。

うちから、多くの卒業生が聖魔騎士団魔導部隊に入隊していった。

彼らは今、聖魔騎士団で活躍していることだろう。

私はこの名誉ある学院の、学院長を務めている。

我ながら大仰な立場だなぁと思う。

あのイーニシュフェルト魔導学院の学院ともあろう人物なのだから、きっと威厳に満ち溢れ、教育に厳格で、品行方正生真面目で、頑固ジジィを絵に描いたような人物なのだろう…と、

…思われているらしいのだが。
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