神殺しのクロノスタシス1
両親は、弟が知的障害者であると知ったその日から、弟に対する愛情を失った。
この間まで、あんなに猫可愛がりしていたのが嘘のようだ。
これから先、弟に献身的な療育を施さなければならないと医者に言われ。
あんなに大事にしていた弟が、今度は途端に面倒な存在に変わってしまったのだ。
療育を施したとしても、それで健常児になれる訳ではない。
薬や手術で治るものでもない。
この子は、自分達が思っているより遥かに、手がかかる。
しかも、普通の子供のように、20歳かそこらまで育てれば良い訳ではない。
勝手に自立してはくれない。
弟は、一生誰かの手を借りなければ、生きていけないのだ。
それこそ、両親は死ぬまでこの弟の面倒を見なければならなくなった。
こんなに手がかかるなんて、聞いてない。
両親にとっては、そんな思いだったのだろう。
決して弟が悪い訳ではない。
両親が悪かった訳でもない。
誰かが悪かったから、弟が障害を持って生まれてきた訳じゃない。
それなのに。
あれだけ可愛がっていた癖に、障害があると知った途端、両親はあからさまに弟に興味を失った。
無責任だ、と思った。
結局あの二人は、自分にとって都合の良い子供が可愛かったのであって。
自分にとって都合の悪い子供は、愛すべき対象にはならなかったのだ。
僕が、そうであったように。
こうして、弟は生まれてからたった二年と半年で、親の愛情を失った。
しかし、それでも僕は弟が羨ましかった。
だって彼は、生まれてから二年も、両親に愛されていた。
対する僕は、生まれてから一度として、親に愛されたことなどないのだから。
しかも、弟は自分が愛されてないことにも気づいていなかった。
気づくほどの知能がないのだから。
そして、両親に見放された弟が、それからどうなったのか。
他の子より遥かに手のかかる弟の世話を押し付けられたのは、僕だった。
この間まで、あんなに猫可愛がりしていたのが嘘のようだ。
これから先、弟に献身的な療育を施さなければならないと医者に言われ。
あんなに大事にしていた弟が、今度は途端に面倒な存在に変わってしまったのだ。
療育を施したとしても、それで健常児になれる訳ではない。
薬や手術で治るものでもない。
この子は、自分達が思っているより遥かに、手がかかる。
しかも、普通の子供のように、20歳かそこらまで育てれば良い訳ではない。
勝手に自立してはくれない。
弟は、一生誰かの手を借りなければ、生きていけないのだ。
それこそ、両親は死ぬまでこの弟の面倒を見なければならなくなった。
こんなに手がかかるなんて、聞いてない。
両親にとっては、そんな思いだったのだろう。
決して弟が悪い訳ではない。
両親が悪かった訳でもない。
誰かが悪かったから、弟が障害を持って生まれてきた訳じゃない。
それなのに。
あれだけ可愛がっていた癖に、障害があると知った途端、両親はあからさまに弟に興味を失った。
無責任だ、と思った。
結局あの二人は、自分にとって都合の良い子供が可愛かったのであって。
自分にとって都合の悪い子供は、愛すべき対象にはならなかったのだ。
僕が、そうであったように。
こうして、弟は生まれてからたった二年と半年で、親の愛情を失った。
しかし、それでも僕は弟が羨ましかった。
だって彼は、生まれてから二年も、両親に愛されていた。
対する僕は、生まれてから一度として、親に愛されたことなどないのだから。
しかも、弟は自分が愛されてないことにも気づいていなかった。
気づくほどの知能がないのだから。
そして、両親に見放された弟が、それからどうなったのか。
他の子より遥かに手のかかる弟の世話を押し付けられたのは、僕だった。