神殺しのクロノスタシス1
まるで地獄のような日々だった。
あれほど世話をしていたのに、弟に対する情は、何も湧かなかった。
むしろ、煩わしかった。
弟の方も、世話してくれる兄を慕うことはなかった。
それだけの知能がなかった。
食事も自分で食べてくれないから、毎食食べさせなければならない。
でも素直に食べてはくれなくて、気に入らないものがあれば握り潰すか、皿をひっくり返して癇癪を起こした。
幼いうちはまだ良いものの、ある程度大きくなってくると、暴れる弟を押さえつけるのは至難の業だった。
暴れるのを押さえ込む拍子に、顔やお腹を殴られたことも何度もある。
お風呂に入れるのは、もっと大変だった。
弟はお風呂に入るのが大嫌いで、風呂に入れようとすると、闘牛のように暴れまくった。
更に、着るものにもこだわりがあって、自分の気に入った下着やパジャマでなければ、癇癪を起こした。
だから我が家では毎日のように、脱衣場で裸でびしょ濡れの弟と、激しい攻防を繰り広げなければならなかった。
当事者からすれば、これは笑い事ではない。
ようやく服を着せた頃には、脱衣場は水浸しになっていた。
その水浸しになった壁や床を、乾いたタオルで拭くのも、僕の仕事だった。
弟との攻防でへとへとになりながら、僕は床に這いつくばって、弟が暴れたときに飛び散った水滴を拭いた。
あの憐れな光景は、今でも忘れられない。
弟が昼夜を問わず癇癪を起こすせいで、近所からのクレームも日常茶飯事だった。
近所から苦情を言われる度、母は僕に「弟の面倒をちゃんと見てよ」と溜め息をついて言った。
それはあんたの仕事じゃないのか。
僕はそう思った。
弟がどんなに暴れようと、僕がどんなにてこずっていようと、母も父も、全く手を貸してはくれなかった。
全てを、僕に任せきっていた。
そして自分達は、健常児の、育てやすい妹だけの世話をして、親になった気分でいた。
それが、とても恨めしかった。
あれほど世話をしていたのに、弟に対する情は、何も湧かなかった。
むしろ、煩わしかった。
弟の方も、世話してくれる兄を慕うことはなかった。
それだけの知能がなかった。
食事も自分で食べてくれないから、毎食食べさせなければならない。
でも素直に食べてはくれなくて、気に入らないものがあれば握り潰すか、皿をひっくり返して癇癪を起こした。
幼いうちはまだ良いものの、ある程度大きくなってくると、暴れる弟を押さえつけるのは至難の業だった。
暴れるのを押さえ込む拍子に、顔やお腹を殴られたことも何度もある。
お風呂に入れるのは、もっと大変だった。
弟はお風呂に入るのが大嫌いで、風呂に入れようとすると、闘牛のように暴れまくった。
更に、着るものにもこだわりがあって、自分の気に入った下着やパジャマでなければ、癇癪を起こした。
だから我が家では毎日のように、脱衣場で裸でびしょ濡れの弟と、激しい攻防を繰り広げなければならなかった。
当事者からすれば、これは笑い事ではない。
ようやく服を着せた頃には、脱衣場は水浸しになっていた。
その水浸しになった壁や床を、乾いたタオルで拭くのも、僕の仕事だった。
弟との攻防でへとへとになりながら、僕は床に這いつくばって、弟が暴れたときに飛び散った水滴を拭いた。
あの憐れな光景は、今でも忘れられない。
弟が昼夜を問わず癇癪を起こすせいで、近所からのクレームも日常茶飯事だった。
近所から苦情を言われる度、母は僕に「弟の面倒をちゃんと見てよ」と溜め息をついて言った。
それはあんたの仕事じゃないのか。
僕はそう思った。
弟がどんなに暴れようと、僕がどんなにてこずっていようと、母も父も、全く手を貸してはくれなかった。
全てを、僕に任せきっていた。
そして自分達は、健常児の、育てやすい妹だけの世話をして、親になった気分でいた。
それが、とても恨めしかった。