神殺しのクロノスタシス1
試験が無事に終わった後。

私はアトラスさんに言われた通り、訓練場を訪れた。

「あ…シュニィ…」

「あぁ、アトラスさんごめんなさい。待たせましたね」

「いや…大丈夫だ」

アトラスさんは、訓練場の壁際に設置してあるベンチに腰掛けて待っていた。

私は彼の横に座った。

話って…一体何だろう。

さっきまであんな虚しい気持ちで一杯だったのに、彼の隣に座ると、そんな気持ちも何処かに消えてしまった。

あぁ、やっぱりここは居心地が良い。

「話って、何ですか?」

「ん、あぁ…」

アトラスさんは、そわそわした落ち着かない様子だった。

珍しいこともあるものだ。

「アトラスさん…?」

「いや、その…。そうだ、つ、疲れてない…か?試験…長かったし」

「疲れて…。いえ、大丈夫ですよ。それよりアトラスさんの方が疲れてるんじゃないですか?」

アトラスさんの方が、私より遥かに動き回っていたのだから。

しかし、アトラスさんは。

「いや…俺は大丈夫だ。体力だけは、人一倍…いや、人三倍はあるからな」

「ふふ…そうでしたね」

あと、腕力もね。

「それで…お話ししたいことというのは…」

「それは…その…。俺は、お前が…」

「…私が…?」

何?私が。

アトラスさんは何かを言おうとして、もごもごと口ごもってから。

「その…。し…試験!そう、試験…終わったな」

「…?はい…そうですね」

「シュニィのお陰で、優勝することが出来た。本当に…ありがとうな」

「いえ、こちらこそ。あなたがいてくれたから…私も、最後まで頑張ることが出来ました。こんなに達成感のある試験は初めてです。ありがとうございました」

同時に今、虚しさを抱えていることは…アトラスさんには、言わなかった。

言えるはずがない。

…で。

言いたいことっていうのは、それなのか?

「…シュニィ、その…」

「はい…?」

「えっと…。だから…お前を、その…」

「…?」

アトラスさんは、何故か顔を真っ赤にして俯いてしまった。

「どう…したんですか?」

「…」

私は…何を、どうしたら良いのか。

何かを察するべきなのだろうが…それはあまりに厚かましい気がした。
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