神殺しのクロノスタシス1
中学校の入学式が行われる、一週間前のこと。

その日、両親と妹は、家族三人で仲良く出掛けていた。

弟と、その世話役の僕だけが、家に取り残されていた。

この家では、いつものことだ。

弟を外に連れていく訳にはいかないし、一人で家に置いていくことも出来ない。

一人で家に置いていこうものなら、何をするか分からないから。

従って、世話係の僕が家に取り残されて、仲良し家族の三人だけが、気兼ねすることもなく出掛けていくのだ。

絶望の淵に立たされていた僕は、ここ何日も、ぼんやりと過ごしていた。

いっそ首を吊ってしまおうか、という気持ちにさえなった。

そのときだった。

来客を告げるインターホンの音が鳴り響き、僕は現実に引き戻された。

慌てて立ち上がり、玄関に向かうと。

そこにいたのは。

「やぁ、こんにちは。エリュティア君かな?」

「え…?あ、はい…」

…見覚えがある。

この人は確か…イーニシュフェルト魔導学院の入学資料に顔写真が載っていた…。

…まさか。

「覚えてるかな?イーニシュフェルト魔導学院の学院長、シルナ・エインリーです」

彼は、入試説明会のときに見せたのと同じ、優しそうな笑みを浮かべた。
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