神殺しのクロノスタシス1
にこにこ顔の妹と共に帰宅した両親は、家に客が来ているのを見て驚いた。
しかもそれがイーニシュフェルト魔導学院の学院長と言うのだから、余計に。
でも魔導師でない二人は、シルナ・エインリーという人物の偉大さについて、全く分からなかったようで。
わざわざ王都から、インチキ学校の学院長がうちに何の用?と胡散臭そうな顔だった。
僕は、それが恥ずかしかった。
こんな無知な人達が僕の両親だなんて、恥ずかしくて、学院長の顔を見られなかった。
しかし学院長は全く気にすることなく、両親に相対した。
「こんにちは、初めまして。イーニシュフェルト魔導学院の学院長、シルナ・エインリーです」
「はぁ…。イーニシュフェルトの学院長が、うちに何の用です?」
このつれない、冷たい態度。
ますます恥ずかしかった。
「いきなり訪ねてきて済みません。大変申し訳ないのですが…」
「あの…。うちも暇じゃないので、用件があるなら早く言ってくれませんか」
天下のイーニシュフェルト魔導学院の学院長に、こんな口を利くとは。
学院長が激昂しないかと、僕は内心はらはらしていた。
しかし。
「では、率直に申し上げます。お宅の息子さん、エリュティア君を、イーニシュフェルト魔導学院に入学させてあげてください」
きっぱりと。
躊躇うことなく、顔色を伺うこともなく。
学院長は、そう言った。
これには、両親も少したじろいだ。
「イーニシュフェルト魔導学院に…?どうして」
「彼はうちの入学試験に、とても優秀な成績で合格しています。そんな優秀な魔導師の卵に入学辞退されると、こちらも痛手ですから」
「…」
まさか、そんなことを言う為に、わざわざ王都から来たのだとは思わなかったらしく。
両親も、ぎょっとした顔をしていた。
「勝手なことを言わないでください。うちの子が何処の学校に進もうと、それはうちの勝手でしょ」
確かにそうだ。
理屈としては、母の言うことは、何も間違っていない。
「でも、彼からは面接時に『イーニシュフェルト魔導学院に来たい』という強い熱意を感じました。彼がイーニシュフェルトに進学したいと言うなら、それを叶えてあげるのが親心というものでは?」
「余計なお世話です。とにかく、うちの子を王都にやるつもりはありませんから」
母にきっぱりそう言われたとき、僕は胸にナイフを突き立てられたような気分になった。
やっぱり、僕はイーニシュフェルト魔導学院には…。
しかし、学院長は動じない。
「では、何故入学試験前に止めなかったんですか?」
「それは…。まさか、本当に合格するとは思ってなかったから…」
「それだけエリュティア君が、優秀だということです。是非、イーニシュフェルト魔導学院に通ってもらいたい」
「…」
自分の息子の成績如何なんて、まともに考えたこともない母は、口ごもってしまった。
わざわざ学院長が訪ねてくるくらいなのだから、もしかしたら、それなりの成績なのかもしれない、と。
初めて、母は僕の成績が気になったのだ。
それまでは、全く興味がなかったのだから…。
しかもそれがイーニシュフェルト魔導学院の学院長と言うのだから、余計に。
でも魔導師でない二人は、シルナ・エインリーという人物の偉大さについて、全く分からなかったようで。
わざわざ王都から、インチキ学校の学院長がうちに何の用?と胡散臭そうな顔だった。
僕は、それが恥ずかしかった。
こんな無知な人達が僕の両親だなんて、恥ずかしくて、学院長の顔を見られなかった。
しかし学院長は全く気にすることなく、両親に相対した。
「こんにちは、初めまして。イーニシュフェルト魔導学院の学院長、シルナ・エインリーです」
「はぁ…。イーニシュフェルトの学院長が、うちに何の用です?」
このつれない、冷たい態度。
ますます恥ずかしかった。
「いきなり訪ねてきて済みません。大変申し訳ないのですが…」
「あの…。うちも暇じゃないので、用件があるなら早く言ってくれませんか」
天下のイーニシュフェルト魔導学院の学院長に、こんな口を利くとは。
学院長が激昂しないかと、僕は内心はらはらしていた。
しかし。
「では、率直に申し上げます。お宅の息子さん、エリュティア君を、イーニシュフェルト魔導学院に入学させてあげてください」
きっぱりと。
躊躇うことなく、顔色を伺うこともなく。
学院長は、そう言った。
これには、両親も少したじろいだ。
「イーニシュフェルト魔導学院に…?どうして」
「彼はうちの入学試験に、とても優秀な成績で合格しています。そんな優秀な魔導師の卵に入学辞退されると、こちらも痛手ですから」
「…」
まさか、そんなことを言う為に、わざわざ王都から来たのだとは思わなかったらしく。
両親も、ぎょっとした顔をしていた。
「勝手なことを言わないでください。うちの子が何処の学校に進もうと、それはうちの勝手でしょ」
確かにそうだ。
理屈としては、母の言うことは、何も間違っていない。
「でも、彼からは面接時に『イーニシュフェルト魔導学院に来たい』という強い熱意を感じました。彼がイーニシュフェルトに進学したいと言うなら、それを叶えてあげるのが親心というものでは?」
「余計なお世話です。とにかく、うちの子を王都にやるつもりはありませんから」
母にきっぱりそう言われたとき、僕は胸にナイフを突き立てられたような気分になった。
やっぱり、僕はイーニシュフェルト魔導学院には…。
しかし、学院長は動じない。
「では、何故入学試験前に止めなかったんですか?」
「それは…。まさか、本当に合格するとは思ってなかったから…」
「それだけエリュティア君が、優秀だということです。是非、イーニシュフェルト魔導学院に通ってもらいたい」
「…」
自分の息子の成績如何なんて、まともに考えたこともない母は、口ごもってしまった。
わざわざ学院長が訪ねてくるくらいなのだから、もしかしたら、それなりの成績なのかもしれない、と。
初めて、母は僕の成績が気になったのだ。
それまでは、全く興味がなかったのだから…。