神殺しのクロノスタシス1
『禁忌の黒魔導書』を探す為に探索魔法を使ったとき、僕は時折、とてつもなく邪悪な魔力を感じることがある。

朧気ながらだが、それは確かにある。

『禁忌の黒魔導書』なんかより、もっともっと邪悪で、闇にまみれた魔力。

初めてその魔力を感知したとき、思わず身体が震えたほどだ。

これほど邪悪な魔力は、他に感じたことはない。

そして。

その邪悪な魔力の発生源は、丁度イーニシュフェルト魔導学院にあるのだ。

この事実を、僕は誰にも話していない。

多分学院長は、僕が勘づいていることを知っているだろう。

でも、学院長も僕に何も言わない。

お互い、知っていて知らない振りをしている。

学院長が何を隠しているのか、あの学院に何があるのか、僕には分からない。

ただ、学院長が僕達に、何か重大な隠し事をしていることだけははっきりしている。

しかし、僕は学院長が何を隠しているのだとしても構わない。

彼が僕を助けてくれた事実に変わりはない。

例えもし、学院長が僕達を欺こうとしているのだとしても、だ。

だからこれからも、僕はこの邪悪な魔力の正体については、探るつもりはなかった。
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