神殺しのクロノスタシス1
side羽久
───────…気がついたときには、この場にいる一人を残す全員が膝をついていた。
そして、起きている一人は、必死に俺を揺さぶっていた。
「二十音…!二十音、大丈夫!?」
「…シルナ…」
薄目を開けると、そこには血相を変えたシルナがいた。
あれ…。俺は何をして…。
「二十音…じゃない。羽久…?」
「あ…?」
俺…また、入れ替わってたのか?
入れ替わってる間に何があったのか、全身がだるくて、指先一本動かすのも億劫だった。
それに。
「…!?」
シュニィや吐月達も、息を荒くして崩れ落ちていた。
かろうじて息はあるようだが、瀕死の状態だ。
「一体、何が…」
「良かった…。二十音、羽久も、ベリクリーデちゃんも皆…無事なんだね」
シルナは涙ながらにそう言って、心から安堵した表情を見せた。
…皆無事…って。
「ベリクリーデは…?」
ベリクリーデは、意識を失って倒れていた。
聖なる神の魔力は感じないが…。一体何処に消えたんだ。
「彼女の中に封じ込めた…。君の中に、禍なる神を封じたのと同じように」
シルナが、そう説明した。
「皆から限界まで、魔力をもらったんだ。羽久…いや、二十音、君からも…」
「…そういうことか」
ここにいるのは、ルーデュニア聖王国でも、桁違いの魔力を持つ魔導師達だ。
彼らの魔力を使えば、神殺しの魔法も不可能ではない…はずだが。
「…前の俺が…二十音が出てこなかったら、どうするつもりだったんだ」
「…」
咄嗟に、俺が入れ替わったから良かったようなものの。
俺達の人格は、それぞれ持っている魔力の量も大きく違っている。
二十音だけが、並外れた魔力を持っている。
その二十音が、シルナに魔力を大量に分けたのだろう。
だから、全員生き残れた。
でも、もし俺が入れ替わらなかったら。
「…」
シルナは、何も答えなかった。
…そうか、そうだよな。
死ぬつもりだったんだな。自分が。
自分が死ぬことで、魔法を完成させようとしたんだな。
「…この、大馬鹿野郎」
お互いふらふらだから、殴るのは勘弁してやろう。
でも。
「…次、また自分を犠牲にしようとしたら…死んでも許さないからな」
「…羽久…」
「あの世でも、絶対口利いてやらない。お前なんて大ッ嫌いだって言ってやる」
「それはやめてくださいお願いします」
それだけは嫌だったらしい。
「…なら、もうやめろよ」
「…うん」
「天国でも、地獄でも、何処にでもついていってやるから…。自分だけ犠牲になろうとするのは、やめてくれ」
「…うん」
「一人だけで…生きてる訳じゃないんだから…」
お前が死んだら悲しむ人が、一杯いるんだよ。
頼むから、そのことを思い出してくれ。
そして、起きている一人は、必死に俺を揺さぶっていた。
「二十音…!二十音、大丈夫!?」
「…シルナ…」
薄目を開けると、そこには血相を変えたシルナがいた。
あれ…。俺は何をして…。
「二十音…じゃない。羽久…?」
「あ…?」
俺…また、入れ替わってたのか?
入れ替わってる間に何があったのか、全身がだるくて、指先一本動かすのも億劫だった。
それに。
「…!?」
シュニィや吐月達も、息を荒くして崩れ落ちていた。
かろうじて息はあるようだが、瀕死の状態だ。
「一体、何が…」
「良かった…。二十音、羽久も、ベリクリーデちゃんも皆…無事なんだね」
シルナは涙ながらにそう言って、心から安堵した表情を見せた。
…皆無事…って。
「ベリクリーデは…?」
ベリクリーデは、意識を失って倒れていた。
聖なる神の魔力は感じないが…。一体何処に消えたんだ。
「彼女の中に封じ込めた…。君の中に、禍なる神を封じたのと同じように」
シルナが、そう説明した。
「皆から限界まで、魔力をもらったんだ。羽久…いや、二十音、君からも…」
「…そういうことか」
ここにいるのは、ルーデュニア聖王国でも、桁違いの魔力を持つ魔導師達だ。
彼らの魔力を使えば、神殺しの魔法も不可能ではない…はずだが。
「…前の俺が…二十音が出てこなかったら、どうするつもりだったんだ」
「…」
咄嗟に、俺が入れ替わったから良かったようなものの。
俺達の人格は、それぞれ持っている魔力の量も大きく違っている。
二十音だけが、並外れた魔力を持っている。
その二十音が、シルナに魔力を大量に分けたのだろう。
だから、全員生き残れた。
でも、もし俺が入れ替わらなかったら。
「…」
シルナは、何も答えなかった。
…そうか、そうだよな。
死ぬつもりだったんだな。自分が。
自分が死ぬことで、魔法を完成させようとしたんだな。
「…この、大馬鹿野郎」
お互いふらふらだから、殴るのは勘弁してやろう。
でも。
「…次、また自分を犠牲にしようとしたら…死んでも許さないからな」
「…羽久…」
「あの世でも、絶対口利いてやらない。お前なんて大ッ嫌いだって言ってやる」
「それはやめてくださいお願いします」
それだけは嫌だったらしい。
「…なら、もうやめろよ」
「…うん」
「天国でも、地獄でも、何処にでもついていってやるから…。自分だけ犠牲になろうとするのは、やめてくれ」
「…うん」
「一人だけで…生きてる訳じゃないんだから…」
お前が死んだら悲しむ人が、一杯いるんだよ。
頼むから、そのことを思い出してくれ。