神殺しのクロノスタシス1
「…ねぇ羽久。今回の事件の犯人ってさ」

「あん?」

「一体、どんな人なんだろうね?」

「…」

どうしても、それが気になる。

複数の時空を自由に行き来するほどの実力を持つ魔導師が。

小さな女の子ばかりを狙い、猟奇的な殺人を繰り返す。

一体、どんな人なんだろう。何で、そんなことをするのだろう。

「それは…あれだろ?シルナと同じロリコンで…」

「あーはいはい、そういうのは良いから」

私はロリコンじゃないから。何度も言ってるけど。

まぁ、小さな女の子ばかりを狙っているっていうことは?

もしかしたら、そっち系の趣味をお持ちなのかもしれないけど?

それは人の趣味嗜好、性癖というものであって…。私に口を出す権利はない。

幼女好きなのは人の自由だけど、でもだからって殺しちゃいけないよなぁ?

「しかも、心臓抉り出すくらいなんだから…。とんでもないサイコパス野郎なんだろうよ」

「野郎って…。女の子かもしれないじゃん」

「知らないよ。とにかくサイコパスには変わりない」

…そうかもね。

ただ殺しているだけじゃないのだ。

まずは喉を一突きして息の根を止め、その後死体の胸を切り裂いて、心臓だけを取り出す。

これほど猟奇的な殺害方法を、何度も繰り返すとは。

正気の沙汰とは思えない。

まぁ、普通の神経してたら、出来ないよね。

そんな方法で人を殺そうなんて、思い付きもしないだろう。

それを思い付き、実行に移しているのだから…。

羽久の言う通り、サイコパスと言えるのかもしれない。

「サイコパスかー。うーん…」

「何?」

「いや…」

本当にサイコパスなのかなぁ…。

もしかして、何か事情があって…なんて可能性は。

って言うと、羽久は「甘い」って言うんだろうなぁ。

確かに甘いかもしれないけど…。

「…それより…この犯人、心臓抉り出して…何処に持っていったんだろう?」

「さぁ…。捨てたのか…。コレクションして楽しんでるんじゃないの?どっちにしても胸糞悪いけど」

…捨てたんだとしたら、何処かで見つかってるはずだから…。本人が持ってるのか。

羽久の言う通り、どちらにしても胸糞悪いのは変わりない。

「とにかく、さっさと見つけて…さっさと捕まえて、罪を償わせるぞ」

「…そうだね」

それが、償うべき罪だったら…ね。
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