神殺しのクロノスタシス1
…あっという間に。
少女の身体は、干からびたミイラのようになった。
「…」
でも、儀式はまだ終わらない。
俺は女の子の身体を、地面に横たえた。
血はほとんど俺が飲んでしまったから、地面が血で汚れているようなことはなかった。
精々、僅かに飛び散っている程度。
俺はカッターナイフを再び手に取り、少女の上に跨がった。
青いスモックを切り裂き、左胸の皮膚にナイフを突き立てる。
これも、もう慣れたもの。
思いっきり突き立てて、思いっきり引き裂かないと、取り出せない。
ぐちゃぐちゃと肉を切り裂くと、「中身」が見えてきた。
あんまり力を入れてナイフを動かしたものだから、途中でナイフの方が負けて、ポキッと刃が折れてしまった。
でも、構わない。
ナイフの代わりに手を突っ込んで、「それ」を探り当てる。
…あぁ、これだ。
しっかりと手に掴み、血管をぶちぶちを引きちぎりながら、無理矢理外の世界に引っ張り出す。
肉や骨に邪魔されて、なかなか取り出せない。
しばらく悪戦苦闘して、俺はようやく、心臓を取り出すことに成功した。
永久に動くことをやめてしまったそれを、しばしぼんやりと見つめ。
「…あむ」
赤いリンゴでも齧るかのように。
赤黒い心臓に、かぷり、と齧りついた。
リンゴよりもずっと小さくて、子供の握りこぶしほどの心臓なんて、あっという間だ。
ほんの五分もしないうちに、俺の手には、何もなくなっていた。
「…はぁ…」
…少し、楽になった。
沸き立つような衝動が、マシになっている。
…でも。
「…まだ足りない」
世界を移動したときは、いつもこうだ。
一人だけじゃ足りない。
もう一人…欲しい。
「…」
俺は、無惨に心臓を抜き取られた少女の遺骸を見下ろした。
…もう、これに価値はない。
いつもならちゃんと死体を処理するのだが、今はそんなことをしている時間が惜しい。
視線を上げると、そこに、ヒビ割れて埃を被ったポリバケツが置いてあるのが見えた。
…あぁ、あれで良いじゃん。
「ゴミ」なんだから…ゴミ箱に捨てないと。
俺は少女の遺骸を掴み、ポリバケツの中に投げ入れた。
蓋をして、その上から、路地裏に放置されていた朽ちた段ボールやガラクタを置いて、カモフラージュする。
これで良いだろう。
俺は、急いでその場を離れた。
そのときにはもう、先程俺が殺した女の子のことなんて、頭にはなかった。
俺の頭にあるのは、これから殺す女の子のことだけだった。
少女の身体は、干からびたミイラのようになった。
「…」
でも、儀式はまだ終わらない。
俺は女の子の身体を、地面に横たえた。
血はほとんど俺が飲んでしまったから、地面が血で汚れているようなことはなかった。
精々、僅かに飛び散っている程度。
俺はカッターナイフを再び手に取り、少女の上に跨がった。
青いスモックを切り裂き、左胸の皮膚にナイフを突き立てる。
これも、もう慣れたもの。
思いっきり突き立てて、思いっきり引き裂かないと、取り出せない。
ぐちゃぐちゃと肉を切り裂くと、「中身」が見えてきた。
あんまり力を入れてナイフを動かしたものだから、途中でナイフの方が負けて、ポキッと刃が折れてしまった。
でも、構わない。
ナイフの代わりに手を突っ込んで、「それ」を探り当てる。
…あぁ、これだ。
しっかりと手に掴み、血管をぶちぶちを引きちぎりながら、無理矢理外の世界に引っ張り出す。
肉や骨に邪魔されて、なかなか取り出せない。
しばらく悪戦苦闘して、俺はようやく、心臓を取り出すことに成功した。
永久に動くことをやめてしまったそれを、しばしぼんやりと見つめ。
「…あむ」
赤いリンゴでも齧るかのように。
赤黒い心臓に、かぷり、と齧りついた。
リンゴよりもずっと小さくて、子供の握りこぶしほどの心臓なんて、あっという間だ。
ほんの五分もしないうちに、俺の手には、何もなくなっていた。
「…はぁ…」
…少し、楽になった。
沸き立つような衝動が、マシになっている。
…でも。
「…まだ足りない」
世界を移動したときは、いつもこうだ。
一人だけじゃ足りない。
もう一人…欲しい。
「…」
俺は、無惨に心臓を抜き取られた少女の遺骸を見下ろした。
…もう、これに価値はない。
いつもならちゃんと死体を処理するのだが、今はそんなことをしている時間が惜しい。
視線を上げると、そこに、ヒビ割れて埃を被ったポリバケツが置いてあるのが見えた。
…あぁ、あれで良いじゃん。
「ゴミ」なんだから…ゴミ箱に捨てないと。
俺は少女の遺骸を掴み、ポリバケツの中に投げ入れた。
蓋をして、その上から、路地裏に放置されていた朽ちた段ボールやガラクタを置いて、カモフラージュする。
これで良いだろう。
俺は、急いでその場を離れた。
そのときにはもう、先程俺が殺した女の子のことなんて、頭にはなかった。
俺の頭にあるのは、これから殺す女の子のことだけだった。