神殺しのクロノスタシス1
二人目のターゲットを見つけたときには、既に辺りは暗くなっていた。

実におあつらえ向きだ。

さて、先程のように都合良く歩いていないものか、と辺りを見渡すが。

なかなか、一人で歩いている女の子は見つからない。

学校帰りらしい女子高生や、コーヒーショップのカップを持って歩く女子大生ばかりが目立つ。

でも、あれじゃ駄目なのだ。

あれほど大きくなっていると、駄目。

最低でも小学生…それも、低学年でなくては。

さっきみたいな、幼稚園くらいの女の子が良い。

でもそういう年頃の子は、なかなか一人で歩いていることがない。

だから、探すのが大変だ。

それでも今までの世界だと、ちらほら一人で歩いている子を見かけたのだけど…。

この新しい世界は、余程治安が良いらしいな。

なかなか一人で歩いている子を見ない。

先程見つけた子は、本当にレアな存在だったんだろう。

とはいえ…一人で歩いていなければ、ターゲットになり得ない訳じゃない。

ようは誰にも見られず、こっそり路地裏に連れ込めれば、こちらのものなのだ。

周囲を注意深く見渡すと。

「…あ」

…丁度良さそうなターゲットを見つけた。

郵便局の横に車を停め、助手席のチャイルドシートに、一人で座って手遊びをしている女の子。

母親は、女の子を車に残して郵便局で用事を済ませているのだろう。

…これは、チャンスだ。

俺は再度周囲をよく見渡して、人の目や監視カメラがないかチェックした。

…大丈夫。この位置なら。

さりげなく車に近づき、チャイルドシートでつまらなさそうに母親を待っている女の子を、間近に見た。

…うん。丁度…食べ頃じゃないか。

俺は助手席の窓を、こんこん、とノックした。

すると女の子が、俺に気づいてこちらを見た。

窓を開けて、と笑顔でジェスチャーすると、何も知らない愚かな少女は、無防備に窓を下ろした。

「なぁに?」

俺は無言で笑顔を続けたまま、少女の襟首をがっちりと掴んだ。
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