神殺しのクロノスタシス1
二人の少女を食べたことで、ようやく落ち着いた俺は。

これからこの世界でしばらく暮らしていく為に、準備を始めた。

さしあたっては、住む場所を決めなくては。

長年、こうして色んな世界で暮らしてきた経験で分かる。

俺の歳くらいで、一人でアパートを借りて暮らしていると、大抵怪しまれる。

アパートを借りる段階で、親御さんはどうしたのとか、保証人がいないととか、面倒なことを言われる。

それに、家賃を払うのも大変だ。

別に、魔法で札束をいくらでも作り出せるのだから、金に困る訳ではないのだけど。

何にしても、俺は見た目は十代後半の子供なのだ。

そのせいで、何をするにも保護者や保証人を求められ、窮屈で仕方ない。

見た目が子供なだけで、実年齢は誰よりも上なのだが。

とにかく面倒なので、一人で暮らすのは諦めた。

代わりに、適当に選んだ人間の記憶を魔法で変え、その人の家族として一緒に暮らす。

見た目の年齢相応に、学校に行くこともある。

普通のしがない学生の振りをしながら、また渇きが来れば、定期的にああやって少女を殺す。

大抵はそうしていたし、前回も、そうしたのだが。

前回は、意外に早く見つかってしまった。

運悪く、そうとも知らずに、マフィアの縄張りで女の子を殺してしまったらしいのだ。

そのせいでマフィアに目をつけられ、死神みたいな黒い男に追い詰められ…仕方なく、咄嗟に無理矢理時空を移動してしまった為に、今回は魔力の消費が大きかった。

あんなへまをするのは、最近では珍しい。

相手が悪かったということだろう。

だから、今回は…しばらく学校には通わず、大人しくしていたい。

今回は、こんなときいつも使っている方法で行こうとしよう。

そう決めて歩き出したとき、俺は今日一人目に殺してしまった幼稚園児の女の子を思い出した。

あの子は、死体を処理出来なかった。

そんな余裕がなかったから仕方ないが、ゴミ箱に投げ込むくらいじゃ、恐らくすぐに見つかってしまうだろう。

死体が腐れば異臭がするから、多分それでバレる。

あんな死体が見つかったとなれば、世間は騒ぐだろうな。

今からでも死体を回収しに行こうかと思ったが、正直、もうあの場所が何処だったのか思い出せなかった。

物凄く渇いて、興奮していたことは覚えているのだけど。

あのときはただ、目の前の少女を食らうことで一心不乱で…。

…仕方がない。一人目の少女の死体隠蔽は諦めよう。

代わりに、少しでも遠くに移動して、しばらくは隠れて暮らすことにする。
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