聖女様のお世話係として召喚されました。が、聖女様不在なのですが……?
私はルイ様の婚約者になった。
師長様へ報告するために、ルイ様と共にお城へと向かう。
「サヤカさま!」
城内を歩いていると、
パタパタと早足で駆け寄ってくる足音がした。
聞き覚えのある声がしたので振り向くと、案の定エレナさんだった。
「エレナさん!お久しぶりです。」
「本当にサヤカさまなのですね。お元気そうで安心しました。あ、失礼しました。」
エレナさんは、私の隣にルイ様がいることに気づくと頭を下げる。
「ルイ様、私がこちらの世界に来たばかりの時に、お世話になったエレナさんです。」
「そうか。サヤカが世話になったな。
サヤカはこちらの世界に知り合いが少ない。サヤカにとって、あなたの存在は救いだっただろう」
「そんなことありません。勿体ないお言葉を…
師長様のお部屋へご案内致します。どうぞこちらへ」
エレナさんの反応からして、ルイ様はただならぬ地位の方のようだ。
エレナさんともっと気軽に話したかったけれど、今は控えよう。
「こちらでしばらくお待ちください。師長さまはすぐに参ります」
部屋へ案内されて、エレナさんが退室する前に、扉が勢いよく開かれた。
扉へ視線を移すと、満面の笑みを浮かべて近づいて来る師長さまの姿があった。
「ルイ殿、サヤカ様、おめでとうございます!!
いやぁ、本当にめでたい!
これでサヤカさまに、やっと全てお話しすることができます。
いやぁ、これでやっと肩の荷がおりました」
『あ、ありがとうございます。』
師長様は、私の手を取り両手で上下にぶんぶんと激しく振る。
嬉しくて仕方ないという様子が窺える。
困惑して固まっていると、ルイ様が師長様の手を振り解き、私を引き寄せる。
師長様が向かいのソファーに腰掛けても、その体勢は変わることなかった。
私はルイ様に抱きしめられたまま、話を聞くはめになった。
恥ずかしくて、距離をとろうと試みたけれど、ルイ様はビクともしなかった。
仕方ないのでこのままの体勢で、師長さまのお話を伺うことにした。
恥ずかしくて頬が紅潮する
「サヤカ様、聖女様のお世話係を召喚することはお話ししましたが、お世話係の方にはもう一つ使命がありまして…
その使命と申しますのが、実は
この国の方と結婚することなのです。」
『結婚?どういうことですか』
聖女さまの話し相手ということではなかったのだろうか?
「実は、お世話係というのは名目で、本来のお願いはこちらのほうなのです。
この国の方と結婚し、子孫繁栄することで、この国と異世界の結びつきが強まり、聖女様を召喚しやすくなるのです。
ただし、こちらが強制した結婚ではダメなのです。」
『結婚?』
「はい、過去の文献を紐解きますと、心から慕う相手と結ばれることが望ましいとありました。
お互いに想い合う気持ちが強ければ強いほど、幸せを感じれば感じるほど、異世界との結びつきも比例すると。
ですので、サヤカ様には心の赴くままに自由に活動していただいたのです。
ちょうど、聖女さまが不在なのも功を奏しました。
サヤカさまには保護魔法を施しておりましたので、危険はないと思っていたのですが、お怪我をさせてしまっまことは、不徳の致すところです。
申し訳ない。
ルイ殿の魔力は強力ですからな…」
ルイ様は私の腰に回した手に力を込めて、密着した身体をさらに引き寄せると、耳元で謝罪を述べる
「あの時はすまなかった」
顔が近くて息遣いまで感じられて、なんだか妙な心地になる
『いえ、大丈夫です…』
「勝手なお願いばかりで申し訳ない。
もしもお相手が見つからないようであれ
ば、陛下より有力貴族との婚約を強制に勧めるお話しもありまして。
どうしたものかと日々逡巡しておりました
ルイ殿とのことをお聞きした時は、ほんとに、本当にいや、ほんとに安堵いたしました。」
「強制した結婚ではダメなのではないのか?」
「ルイ殿、それはごもっともなことです。ですが異世界から来られたサヤカ様に興味を示す方も多いのも事実。
異世界から来られたということだけでも神秘的ですし、サヤカ様は可愛らしいですからな。
いや、これはセクハラになりますかな?
許してくだされ。
実は。城でサヤカさまをお見かけした方などから、既に結婚の申し出も多々ありまして…
サヤカ様の存在は、国にとって大切であり、不安定な存在。
邪な考えを持った貴族などに目をつけられたら一大事ですからな。
いらぬ火種になる前に早急にと言われておりました。
陛下は結婚してから愛を育むこともあると仰せで」
師長さまは、その時の事を思い出したのか額の汗を拭っていた
「危ないところだったのだな。
スタン伯父上。私はサヤカを手放すつもりはない。
陛下にも許可いただき早急に式を挙げよう」
『ルイ様…』
考える暇もないくらいに、話が進んでいくので実感が湧かない。
こちらで暮らしていかなければならないなら、その為に結婚しなければならないなら、せめて私の想う方と一緒になりたい。
今の私に真っ先に思い浮かぶのは、
ルイ様。
まだ知り合って間もないけれど、
これから知り合っていったらいいと、
それが楽しみだと言ってくれた人
ふとルイ様の顔を見上げると、
ルイ様は私の頬に軽く口づける。
皆の前でキスされたことに驚く。
『ルイ様!な、なにをされるのですかっ、見られてます…恥ずかしいです』
羞恥心でいっぱいで逃げだそうとするも、ルイ様は逃してくれない。
「私は構わないが?」
ルイ様は聞く耳を持たずに、頬や額に口づけを落とす。
生温かい視線を向けながら、師長様はエレナさん共々そそくさと退出して行った。
「サヤカさまお幸せに」
「あとはお二人でごゆっくり」
と言葉を残して。
ルイ様は一向にやめてくれる気配がなく、口づけは首筋へとエスカレートしていった。
「あっ、ルイ様っ」
「サヤカ、これからもずっと傍にいさせてほしい。」
ルイ様の瞳に見つめられると胸が熱くなる。
『はい。私もずっとお側に』
「サヤカ、もっとじっくり堪能したい。帰ろう」
ルイ様と一緒にいるととても安心する。
異世界との結びつきなんて分からないけ
ど、ルイ様とずっと一緒にいれるなら、こ
の国で頑張っていこう。
ルイ様と共に転移魔法で移動する最中も、ルイ様の温もりを感じていた。
聖女さまとは結局会えなかったな…
fin
拙い文章ですが、最後までお読みいただきありがとございました。
師長様へ報告するために、ルイ様と共にお城へと向かう。
「サヤカさま!」
城内を歩いていると、
パタパタと早足で駆け寄ってくる足音がした。
聞き覚えのある声がしたので振り向くと、案の定エレナさんだった。
「エレナさん!お久しぶりです。」
「本当にサヤカさまなのですね。お元気そうで安心しました。あ、失礼しました。」
エレナさんは、私の隣にルイ様がいることに気づくと頭を下げる。
「ルイ様、私がこちらの世界に来たばかりの時に、お世話になったエレナさんです。」
「そうか。サヤカが世話になったな。
サヤカはこちらの世界に知り合いが少ない。サヤカにとって、あなたの存在は救いだっただろう」
「そんなことありません。勿体ないお言葉を…
師長様のお部屋へご案内致します。どうぞこちらへ」
エレナさんの反応からして、ルイ様はただならぬ地位の方のようだ。
エレナさんともっと気軽に話したかったけれど、今は控えよう。
「こちらでしばらくお待ちください。師長さまはすぐに参ります」
部屋へ案内されて、エレナさんが退室する前に、扉が勢いよく開かれた。
扉へ視線を移すと、満面の笑みを浮かべて近づいて来る師長さまの姿があった。
「ルイ殿、サヤカ様、おめでとうございます!!
いやぁ、本当にめでたい!
これでサヤカさまに、やっと全てお話しすることができます。
いやぁ、これでやっと肩の荷がおりました」
『あ、ありがとうございます。』
師長様は、私の手を取り両手で上下にぶんぶんと激しく振る。
嬉しくて仕方ないという様子が窺える。
困惑して固まっていると、ルイ様が師長様の手を振り解き、私を引き寄せる。
師長様が向かいのソファーに腰掛けても、その体勢は変わることなかった。
私はルイ様に抱きしめられたまま、話を聞くはめになった。
恥ずかしくて、距離をとろうと試みたけれど、ルイ様はビクともしなかった。
仕方ないのでこのままの体勢で、師長さまのお話を伺うことにした。
恥ずかしくて頬が紅潮する
「サヤカ様、聖女様のお世話係を召喚することはお話ししましたが、お世話係の方にはもう一つ使命がありまして…
その使命と申しますのが、実は
この国の方と結婚することなのです。」
『結婚?どういうことですか』
聖女さまの話し相手ということではなかったのだろうか?
「実は、お世話係というのは名目で、本来のお願いはこちらのほうなのです。
この国の方と結婚し、子孫繁栄することで、この国と異世界の結びつきが強まり、聖女様を召喚しやすくなるのです。
ただし、こちらが強制した結婚ではダメなのです。」
『結婚?』
「はい、過去の文献を紐解きますと、心から慕う相手と結ばれることが望ましいとありました。
お互いに想い合う気持ちが強ければ強いほど、幸せを感じれば感じるほど、異世界との結びつきも比例すると。
ですので、サヤカ様には心の赴くままに自由に活動していただいたのです。
ちょうど、聖女さまが不在なのも功を奏しました。
サヤカさまには保護魔法を施しておりましたので、危険はないと思っていたのですが、お怪我をさせてしまっまことは、不徳の致すところです。
申し訳ない。
ルイ殿の魔力は強力ですからな…」
ルイ様は私の腰に回した手に力を込めて、密着した身体をさらに引き寄せると、耳元で謝罪を述べる
「あの時はすまなかった」
顔が近くて息遣いまで感じられて、なんだか妙な心地になる
『いえ、大丈夫です…』
「勝手なお願いばかりで申し訳ない。
もしもお相手が見つからないようであれ
ば、陛下より有力貴族との婚約を強制に勧めるお話しもありまして。
どうしたものかと日々逡巡しておりました
ルイ殿とのことをお聞きした時は、ほんとに、本当にいや、ほんとに安堵いたしました。」
「強制した結婚ではダメなのではないのか?」
「ルイ殿、それはごもっともなことです。ですが異世界から来られたサヤカ様に興味を示す方も多いのも事実。
異世界から来られたということだけでも神秘的ですし、サヤカ様は可愛らしいですからな。
いや、これはセクハラになりますかな?
許してくだされ。
実は。城でサヤカさまをお見かけした方などから、既に結婚の申し出も多々ありまして…
サヤカ様の存在は、国にとって大切であり、不安定な存在。
邪な考えを持った貴族などに目をつけられたら一大事ですからな。
いらぬ火種になる前に早急にと言われておりました。
陛下は結婚してから愛を育むこともあると仰せで」
師長さまは、その時の事を思い出したのか額の汗を拭っていた
「危ないところだったのだな。
スタン伯父上。私はサヤカを手放すつもりはない。
陛下にも許可いただき早急に式を挙げよう」
『ルイ様…』
考える暇もないくらいに、話が進んでいくので実感が湧かない。
こちらで暮らしていかなければならないなら、その為に結婚しなければならないなら、せめて私の想う方と一緒になりたい。
今の私に真っ先に思い浮かぶのは、
ルイ様。
まだ知り合って間もないけれど、
これから知り合っていったらいいと、
それが楽しみだと言ってくれた人
ふとルイ様の顔を見上げると、
ルイ様は私の頬に軽く口づける。
皆の前でキスされたことに驚く。
『ルイ様!な、なにをされるのですかっ、見られてます…恥ずかしいです』
羞恥心でいっぱいで逃げだそうとするも、ルイ様は逃してくれない。
「私は構わないが?」
ルイ様は聞く耳を持たずに、頬や額に口づけを落とす。
生温かい視線を向けながら、師長様はエレナさん共々そそくさと退出して行った。
「サヤカさまお幸せに」
「あとはお二人でごゆっくり」
と言葉を残して。
ルイ様は一向にやめてくれる気配がなく、口づけは首筋へとエスカレートしていった。
「あっ、ルイ様っ」
「サヤカ、これからもずっと傍にいさせてほしい。」
ルイ様の瞳に見つめられると胸が熱くなる。
『はい。私もずっとお側に』
「サヤカ、もっとじっくり堪能したい。帰ろう」
ルイ様と一緒にいるととても安心する。
異世界との結びつきなんて分からないけ
ど、ルイ様とずっと一緒にいれるなら、こ
の国で頑張っていこう。
ルイ様と共に転移魔法で移動する最中も、ルイ様の温もりを感じていた。
聖女さまとは結局会えなかったな…
fin
拙い文章ですが、最後までお読みいただきありがとございました。