聖女様のお世話係として召喚されました。が、聖女様不在なのですが……?
「入っても大丈夫か?」
「は、はい」
ノックの音の後に、昨日お会いした黒髪の男性が入室してくる。
慌ててベッドから上体をおし、乱れた髪を手で整えた。
きれいな人だな……
ゆっくりとベッドの傍まで近づいてくる男性に見惚れて、思わず目で追っていた。
「そのままで大丈夫だ。よく眠れたか?
洗面所はそこだ。自由に使うといい。」
『おはようございます。あの、すみません。ご迷惑をおかけして』
「迷惑などかかっていない。名乗るのが遅くなったが、私はルイだ」
『ルイ様。私は倉持 サヤカと言います』
「くら……聞き慣れない響きだ」
「えっと、サヤカです。サヤカと呼ばれています」
エレナさん達も名乗った時に、戸惑っていたことを思い出した。
日本風の名字は言いにくいのかもしれない。
人間離れした容姿のルイ様と、こうして面と向かってお話するだけでも緊張してしまう。
ほんのりと顔が紅潮してしまうのを、気づかれないといいのだけれど。
「サヤカ嬢か。」
ふっと軽く微笑みを浮かべながら、ルイ様に自分の名前を呼ばれてドキリとする。
付き合ったことはあるけれど、恋愛経験豊富とはいえない。
こんな風に自分の名前を呼ばれただけなのに、体温が向上したのは初めての経験だった。
『あの、呼び捨てで大丈夫ですから』
あの微笑みは心臓に悪い。
自分に好意があるのではないかと勘違いしそうになる。
もう、死んでもいいと思う程に嬉しくも感じる。
ルイ様は、きっと誰にでも優しい人
「ではサヤカ、顔を洗ったら食事にしよう」
そう言い終えると、ルイ様は隣の部屋へと立ち去る。
動揺する気持ちを落ちつかせようと、洗面所へと向かう。
とりあえず顔を洗おう。
あまり待たせてはいけないと思い、隣の部屋へと急いで向かった。
軽くノックをしてから扉を開けると、ルイ様は椅子に座っていた。
テーブルの上には、サンドイッチが置かれていた。
「サヤカ、そちらに座るといい」
促されるまま私は椅子に腰掛けた。
お皿の上に置かれたサンドイッチを改めて見る。
こちらの世界の食事は、驚くことに見慣れたものが多い。
味付けも自分好みだった。こちらに来てから逆に少し太ったかもしれない。
『ルイ様が作られたのですか?』
「いや先程買ってきたものだ。」
『そうなのですね…いただきます』
いつの間に買い物に出かけたのだろう。
お世話になってばかりで申し訳ない。
『いただきます』
おいしい!
空腹だったこともあり、あっという間に完食してしまった。
黙々と食べることに集中していると、ふと視線を感じた。
気のせいかなと確認するために顔をあげると、ルイ様とばっちりと視線が交わる。
『す、すみません…』
恥ずかしくなりすぐに視線をそらした。
「なぜ謝る? サヤカもいただきますと言うのだな」
『え?』
「いただきます。というのは、異世界では食事の前に捧げる祈りの言葉だと聞いたことがある。
確か、食後は……ごちそうさまだったかな?
この国には、異世界から召喚された方の子孫も少なくない。
料理や言葉など、異世界に馴染みのあるものが定着している。」
『…』
無意識とは言え、迂闊だった。
異世界から来たことが、こんなにあっさりバレてしまうなんて……
誤魔化した方がいいのだろうか
「サヤカのことを詮索するつもりはない。ただ、見覚えのある保護魔法がかかっていたので、術者に連絡は入れてある。
」
ルイ様は、特に気にしていない様子だ。
『保護魔法…?』
「知らなかったのか? 家族や大切なものにかける一般的な保護魔法だ。
その魔法がなければ、私の穴に落ちたときに絶命していただろう…
本当に申し訳ない」
ルイさまはそう言うと、私に向かって頭を深く下げられた。
保護魔法というものがかけられていたのに、あんなに酷い怪我を……?
あっさりと告げられた言葉に驚きを隠せない。
『い、いえ、私も足元を見ていなかったのでっ!
この通り、元気になりましたので』
それにしても、どんな穴だったのだろう。
きっと魔法かけてくれていたのは、師長様だ
「サヤカは優しいのだな」
黒曜石の瞳がほんのりと揺れた気がした。
優しいのはルイ様の方なのに。
あぁ、まただ……
妙に胸が騒がしい
この落ち着かない気持ちは━━
「は、はい」
ノックの音の後に、昨日お会いした黒髪の男性が入室してくる。
慌ててベッドから上体をおし、乱れた髪を手で整えた。
きれいな人だな……
ゆっくりとベッドの傍まで近づいてくる男性に見惚れて、思わず目で追っていた。
「そのままで大丈夫だ。よく眠れたか?
洗面所はそこだ。自由に使うといい。」
『おはようございます。あの、すみません。ご迷惑をおかけして』
「迷惑などかかっていない。名乗るのが遅くなったが、私はルイだ」
『ルイ様。私は倉持 サヤカと言います』
「くら……聞き慣れない響きだ」
「えっと、サヤカです。サヤカと呼ばれています」
エレナさん達も名乗った時に、戸惑っていたことを思い出した。
日本風の名字は言いにくいのかもしれない。
人間離れした容姿のルイ様と、こうして面と向かってお話するだけでも緊張してしまう。
ほんのりと顔が紅潮してしまうのを、気づかれないといいのだけれど。
「サヤカ嬢か。」
ふっと軽く微笑みを浮かべながら、ルイ様に自分の名前を呼ばれてドキリとする。
付き合ったことはあるけれど、恋愛経験豊富とはいえない。
こんな風に自分の名前を呼ばれただけなのに、体温が向上したのは初めての経験だった。
『あの、呼び捨てで大丈夫ですから』
あの微笑みは心臓に悪い。
自分に好意があるのではないかと勘違いしそうになる。
もう、死んでもいいと思う程に嬉しくも感じる。
ルイ様は、きっと誰にでも優しい人
「ではサヤカ、顔を洗ったら食事にしよう」
そう言い終えると、ルイ様は隣の部屋へと立ち去る。
動揺する気持ちを落ちつかせようと、洗面所へと向かう。
とりあえず顔を洗おう。
あまり待たせてはいけないと思い、隣の部屋へと急いで向かった。
軽くノックをしてから扉を開けると、ルイ様は椅子に座っていた。
テーブルの上には、サンドイッチが置かれていた。
「サヤカ、そちらに座るといい」
促されるまま私は椅子に腰掛けた。
お皿の上に置かれたサンドイッチを改めて見る。
こちらの世界の食事は、驚くことに見慣れたものが多い。
味付けも自分好みだった。こちらに来てから逆に少し太ったかもしれない。
『ルイ様が作られたのですか?』
「いや先程買ってきたものだ。」
『そうなのですね…いただきます』
いつの間に買い物に出かけたのだろう。
お世話になってばかりで申し訳ない。
『いただきます』
おいしい!
空腹だったこともあり、あっという間に完食してしまった。
黙々と食べることに集中していると、ふと視線を感じた。
気のせいかなと確認するために顔をあげると、ルイ様とばっちりと視線が交わる。
『す、すみません…』
恥ずかしくなりすぐに視線をそらした。
「なぜ謝る? サヤカもいただきますと言うのだな」
『え?』
「いただきます。というのは、異世界では食事の前に捧げる祈りの言葉だと聞いたことがある。
確か、食後は……ごちそうさまだったかな?
この国には、異世界から召喚された方の子孫も少なくない。
料理や言葉など、異世界に馴染みのあるものが定着している。」
『…』
無意識とは言え、迂闊だった。
異世界から来たことが、こんなにあっさりバレてしまうなんて……
誤魔化した方がいいのだろうか
「サヤカのことを詮索するつもりはない。ただ、見覚えのある保護魔法がかかっていたので、術者に連絡は入れてある。
」
ルイ様は、特に気にしていない様子だ。
『保護魔法…?』
「知らなかったのか? 家族や大切なものにかける一般的な保護魔法だ。
その魔法がなければ、私の穴に落ちたときに絶命していただろう…
本当に申し訳ない」
ルイさまはそう言うと、私に向かって頭を深く下げられた。
保護魔法というものがかけられていたのに、あんなに酷い怪我を……?
あっさりと告げられた言葉に驚きを隠せない。
『い、いえ、私も足元を見ていなかったのでっ!
この通り、元気になりましたので』
それにしても、どんな穴だったのだろう。
きっと魔法かけてくれていたのは、師長様だ
「サヤカは優しいのだな」
黒曜石の瞳がほんのりと揺れた気がした。
優しいのはルイ様の方なのに。
あぁ、まただ……
妙に胸が騒がしい
この落ち着かない気持ちは━━