聖女様のお世話係として召喚されました。が、聖女様不在なのですが……?
そういえばルイ様は見覚えのある保護魔法と言われていたけれど、師長様とお知り合いなのかな。
「━━ヤカ」
「サヤカ」
「サヤカ、体調は大丈夫か?」
考えごとをしていて、よびかけられたのに気づかなかった。
『は、はい、大丈夫です。お世話になりました。』
そろそろ帰ろうと思らなければ。
ルイ様に感謝の気持ちを伝えて、立ち上がると、呼び止められた
「サヤカ、家まで送ろう」
「え?」
正直、ルイ様ともう少し一緒にいたい気持ちはある。
けれど、これ以上甘えるのも気が引ける。
『お気持ちはありがたいのですが、大丈夫です。道を教えていただければ一人で帰れます』
「この辺りはあまり人も通らない。女性の一人歩きはおすすめしない。せめて街まで送ろう。移動魔法を使えばすぐ着くのだが…その…
良ければ歩いてもいいだろうか?」
ルイ様に憂いを含んだ眼差しでみつめられると、断れるはずもない。
怪我はもう大丈夫なのに。
ルイ様は罪悪感から過度の心配をしてくれている。
移動魔法というものも気になる。
ルイ様も私と同じく歩くことが好きなのかもしれない。
せっかくのルイ様の申し出を、断り続けるのも……
『では……街までお願いしてもいいでしょうか?』
私が答えると、ルイ様は満面の笑みを浮かべて頷いた。
「あぁ喜んで。では行こうか」
私たちは街へ向かい並んで歩き始めた。
『ルイ様は穴を掘るお仕事をされてるのですか?』
「いや、すまない。実は穴を開けたのは姉に言われたからなのだ」
『お姉さん?』
「あぁ。わたしには姉がいるのだが、占いが得意でな。
とてもよく当たるのだ。
だが、少々腹黒いところもあり…
わざと細かく結果を教えないのだ。
象徴的なことを言い、敢えて何度も占いに来させるのだ。」
『占い師さんなのですか?』
「我が家系は代々魔力が高いものばかりで、父も魔術師、母は魔力はないが、姉も私も魔術師で、姉は副業だと言って占い師として稼いでいるのだ。
一度で結果を教えればよいものを。」
ルイ様から魔力の高いものは貴族に多いことを教わった。
ルイ様も貴族なのだそうだ。
だから所作も綺麗なのだと妙に納得してしまう。
無意識にちらちらとルイ様を見てしまい、気づかれないように慌てて視線をそらす。
「そんな姉が、昨日珍しく私に無料で占いをしてくれたのだ。
その占いの結果が "穴を作れ" だったのだ。
そうすればその……見つかるだろうと」
『何が見つかるのですか?』
「━━待ち人だ。」