聖女様のお世話係として召喚されました。が、聖女様不在なのですが……?
「アハハハハ、お腹痛い、ちょっと、ルイ、あなた、面白すぎ。ほんとに穴に落ちてくるなんて…」
ルイ様からこれまでの経緯を聞き終えたアンナ様は、ずっと笑っている。どうやらツボに入ったようだ。
穴に落ちたことが恥ずかしくなってきて、俯いてしまう
「あら、ごめんなさい。サヤカさんのことを笑った訳ではないの。グフッ、えっとね、私の占いのことはご存知?」
「えぇ、占いをされてるとルイ様より伺いました」
「そ、そうなの、アハハ! いつもはぼかして言うのだけど。
ぼかすというか何と言えばいいのかしら。例えば…そうねぇ。
この先大きな壁にぶつかったら右を選ぶとよいとか。
この時は入隊試験を受けに王都に来た若者に伝えたのだけど。
私にも100%見える訳ではないの。
見える時もあるのだけど、その時は事態が好転する暗示かしら」
「ほんとは見えてるだろ」
「もう、ルイったら、見えていたとしても、敢えてぼかすのがいいんじゃない。
その方が神秘的だし、それに、もう少し詳しく知りたい場合のオプションの提案にもなるし~」
「…」
「な~によその顔は?
私はべつにお金が欲しい訳ではないのよ?
どれだけ自分が魅力的なのか、ということの限界の挑戦をしてるのよ?んふふ」
「まぁ姉上は黙っていると美人だし」
「色々な方が贈り物も下さるのよ。個人的に占って欲しいと。ふふふ」
妖艶な笑みを浮かべながら、そういう言い回しをされると、
なんだか変な意味に聞こえてくる。
「サヤカさん、話しを戻すわね、
その若者は試験には落ちてしまったらしいの。気分が沈んでいたのね。
そして帰り道、迷ってしまって…
その時、私の占いのことを思い出したらしくてね、右側に進んだらしいの。
そしたら曲がり角で人とぶつかったらしくて。
ぶつかったその相手は、咄嗟に逃げようとしたの。 その慌てぶりに違和感を覚えて声をかけたの。
すると襲いかかってきたから、仕方なく応戦して拘束したの。
そこへ隊員が到着して、その人物が追っていた泥棒だと判明して、功績を認められて、入隊が特別に許可されたらしいの。」
『そうなのですね』
「その若者にとっては幸運だったな。だが、私の穴を作れというのは、確かにサヤカと出会えたが、一歩間違えばサヤカを……」
「結果的に無事だったんだから、深く気にしない!
ルイ、ほ~ら、よく言うでしょ?あなたは真っ直ぐだから、言葉のままなのね。」
「言葉のままとは?」
「サヤカさんがあなたが待ち望んだ方なのでしょ?
待ち人現れたじゃない。
待ち人というより落ち人なのかしら?
ほら、よく言うじゃない、恋に#落ちる__・__# って。アハハハ」
「…」『…』
「姉上ふざけてます? すまない、サヤカ、姉上を信じた私の選択がそもそもの間違いだ。
今のことは、きれいすっぱいとサヤカの記憶から消去してほしい。」
姉上と関わるとサヤカが汚れてしまう
、とルイ様に手を引かれて部屋の外へと連れ出されることになった。