月の王子
私の「多分……」の続きは、あなたを好きになりかけている、だった。
初めてのデートに、私たちはわざと夜会う事にした。
公園の小さな灯りの下で、パーカーを着た蒼はいつもよりいっそう端正に見えた。
「夜を好きだっていうといい女だと思ったの?」
蒼が聞いた。
「メモ帳に書いてあった。空を好きだっていうのも。」
「それは見せかけなんだよ。」
私が言った。
「できれば気にして欲しくない。」
「気にしないよ」
蒼が言った。
「もう充分。僕には君が必要で、君には僕が必要なんだから。」
手を繋いで話しながら、私は自分が太陽の王子でなく、月の王子のものになってしまったのを感じた。
おわり