月の王子
家に帰ってからホットココアを飲んだ私は、どっと疲れてベッドに倒れ込んだ。
蒼は多分性格が良い人ではないとは思っていたが、好きな人を言い当ててそう来るとは思わなかった。
私は腹が座っている方なので、もし蒼が良太の前でそう言ったとしてもやり過ごしただろう、だが。
明日から自分がちょっと心配。
私はその日早くに休んだ。
次の日登校すると、ホームルームの前に先生が席替えの準備をしていた。
私は気まずいので蒼の近くにならないように祈っていた。
結局、なんと私は良太の隣の席になった。
わーい、と言ってしまいそうな幸運に、私は口元が緩むのを感じた。
机を動かしていくと良太が言った。
「よろしくな」
よろしく、と言った私はその日1日ハッピーだった。
……蒼が来るまでは。
谷津蒼は次の休み時間になぜか私の席にやって来た。
机に両手をついて立って、良太と話していた私に向かって笑顔で
「良かったね」
と言った。
「古賀さん、この席大好きでしょう。」
私は何のことやらという顔をしてやり過ごした。
────何もしてないのに。
谷津蒼のお節介をちょっと恨んだ。