月の王子





 良太は音楽が好きだ。

 Jpopから洋楽からクラシックから何でも聞く。

 ある朝良太と自分の席で音楽の話になった。

 
「好きな作曲家沢山居るよ」


 クラシックの話になり、私は勢い込んで言った。

 こういう時のために、いい女の秘訣をまとめてある。 素敵に見えそうな作曲家の名前をあげるのだ。


「へえ……古賀ってそういうのが好きなんだ」


 良太は感心したように頷いた。


「聞くなら今日貸してやるよ。持ってきてるから。」


 第一段階突破!ラブイベント発生!と思って胸の中で喜んでいると、ふいに視界が陰って、あいつがやってきた。


「なんの話?」


 蒼は良太に聞いた。


「こいつ音楽聞くんだって。ちょっとオレとセンス似てんの」

「へえーえ」


 蒼は頷いた。



「古賀さんに貸すの?。」

「おう、そうするつもり」



 次の蒼の発言に、私は視界が真っ白になった。


「そのCD、先に僕も聞きたいんだけど」


 蒼が言った。


「え、お前興味あんの?」

「うん」

「マジか」


 良太は頬杖をついて、良いよ、分かった、と言った。





────何こいつ。

私の恋を応援してるんじゃないんだ。





 蒼はCDを受け取ると、ありがとうと笑顔で言ってから、こっちをチラリ、と見た。



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