月の王子






 また放課後、教室で蒼と二人きりになることがあった。

 その時は予想外な事を言われて、私は頭のなかがこんがらがった。


「古賀さん」


 窓際に居た私に、蒼は後ろから声を掛けた。



「また見てる。いい加減やめれば良いのに」

「人の勝手」



 私は言った。



「谷津くん、おせっかいだよ。どうせ失恋だからって。」

「失恋。分かってるのに。」



 蒼は首を傾げた。

 それから言った。


「僕のアドバイスは的確だけど、君は聞いてくれない」


 私が何か言う前に言った。


「優しい人と思われるのは、簡単だけど、それ以上にはなれない。どうしようか。」



 そして突然言った。


「君が……」


 私は思わず立ち上がって目を丸くして蒼を見た。


「僕の好きっていうのわかる?」


 蒼は何でもない事の様に言った。


「君が小瀬を好きなように、僕は君が好きだよ。」


 それからくすくす笑って。


「その感情は、海よりも深く山よりも高いよ。こんな事言ってあれだけど、手に入るものを追った方がいいんじゃないかな。」



 頭痛を起こした私は帰る、といい置いてその場を後にした。
 


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