月の王子
私を好きだと言った人に、違う人へのラブレターを渡すのを頼む。
その悪質なイタズラは、なぜか私を一瞬満ち足りた気持ちにさせた。
でもそれは一瞬だけだった。
放課後また蒼と二人きりになると、私には後悔の念ばかりが押し寄せた。
「ごめん」
私が言った。
「どうかしてた。多分……」
後を聞かずに蒼が言った。
随分呆れた、と言った調子で。
「謝ったから許してもいいけど。」
蒼が言った。
「どうして許すかって言うとどうせ古賀さんの恋は実らないから。」
それから嫌味でもなんでもなさそうに、のんびりと言った。
「かわいそうに。」
「……」
「嘘嘘」
鞄を背負いながら蒼が言った。
「僕を好きになったら許してあげる。じゃなかったら、したこと、骨の髄から恨んで呪い殺してやる。」
「……」
「嘘だよ。」