ひとりぼっちのラブソング

すると、お店のドアが鳴り、振り向くとそこにはニット帽にマフラー姿の瀬戸くんが居た。

「今日、寒いっすね〜。そこら辺、カップルだらけ。あー、やだやだ。」

瀬戸くんはマフラーをほどきながらそう言うと、わたしが食べるケーキを見て「あ!ケーキいいなぁ!」と言った。

「ごめん!瀬戸くん出勤なの知らなかったから、瀬戸くんの分ない!」

わたしがそう言うと、「俺なんていいんっすよ。どうせ俺なんて、、、」といじけて見せる瀬戸くん。

そして「わたしの分、食べる?食べかけだけど。」とわたしが言うと、瀬戸くんは慌てて「いいっす!いいっす!嘘ですよ!さぁ、俺は仕事仕事〜。」と言いながら、買い取って片付いていない本を本棚に並べ始めた。

すると凌さんは立ち上がり、「俺、裏で事務処理して来るから。ケーキご馳走さま。」と言うと、暖簾を潜り奥の部屋へと入って行ってしまった。

静かな店内にカタン、カタンと瀬戸くんが本を本棚に並べる音が響く。

わたしは瀬戸くんのところへゆっくり近付いて行くと、瀬戸くんが本を並べる姿を眺めていた。

「ん?何っすか?」

わたしの視線に気付き、本を並べながら首だけで振り向く瀬戸くん。

わたしは「最近の凌さん、どう?」と訊いてみた。

瀬戸くんは一度手を止めると「どう?って?」と言った。

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